虚構の朝[春]

 買い溜めや

  大行列の

   最後尾

 虚構と踊る

  花冷えの朝


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 この歌を書いていた時は買い溜めが凄かったです…。まさか、店から物が消えてしまうとは。世の中何が起こるか分からないものですね。

 ニュースで何故か開店前から並ぶ人々の映像が流されていました。緊急事態宣言とは。と思わなくも無い光景でしたが、皆さん何を買っていらっしゃるのか。

 店頭から消えた商品は色々ありました。マスクに消毒液に、除菌シート…。まあ、この辺は理解できる範疇ですね。一応防疫に関わる商品なので。問題はトイレットペーパーとかですよ。

 明らかにデマだったんです。「マスクに使うからトイレットペーパーを作る為の紙が無くなる」(大体こんな感じ)なんて。マスクは不織布で出来ているのでどうやってもトイレットペーパーの紙とは違うものです。それでもトイレットペーパーは店頭から無くなりました。

 上のデマを信じた人も、中にはいるでしょう。しかし大半の人はこの事をデマであると認識していたように思います。認識してあいて尚、トイレットペーパーを購入していたんです。「もしもデマを信じた人達に買われてなくなったら困るから」と。

 踊らされている。デマに踊らされている。人間はオイルショックの事を教科書で学んだ筈なのに、どうして同じ事を繰り返すのか。もしかするとオイルショックをリアルタイムで経験した人と思しき人まで買いに来ていて驚きます。歴史は繰り返す。

 そんな慄く気持ちを込めた歌です。やっぱりそんな事する人達はデマとダンスでも踊っているように見えてしまうんですよね。

 季語は花冷えで、桜の花が咲いているのに寒い日を表します。自粛中は皆さん外に出ないので街が閑散としていて寒々しく感じられるのもこの季語に似合うかな、と。それに今年は花見も出来ませんでしたから、桜の花の下にも人がいなくて全体的に冷たい空気があったように見えました。

 これは完全についでなのですが、そんなデマに踊らされる人を見る外野の目がとにかく冷たいというのも、ね。非常に冷ややかな視線だったと思います。

 ちゃんとソーシャルディスタンスを保って並んでいたりするのが滑稽度を上げてきますね。いや、本当にパチンコ店の話題でも思ったんですが、どうしてそこは守ろうとしているのか。自ら死地に向かっているというのにどういう了見なのか、さっぱり分からないのが滑稽味があって最低だと思います。対岸の火事なら笑ってられるタイプの話です。違うから困るんですよね。

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