頭蓋骨[夏]

空梅雨の下の涙滴

 古びた頭蓋骨に落ちる


➖➖➖

Q.(作中で)人を殺し過ぎではないですか?

A.まだまだ殺し足りないですね。もっともっと殺したいです…。(発言がサイコパス)


 空梅雨は雨の降らない梅雨、現在の六月頃(夏)の季語です。幅を取って見れば全く降らない訳ではないのですが、この季語を使用している時点で確実に晴空をイメージして頂いている事でしょう。降っていれば態々空梅雨という季語を使う必然性がありませんからね。

 涙滴は本来ティアドロップ(雫)の形を指します。だから雫の形をしていれば何だって構わないのですが、漢字があまりにも水属性なので(漢字に属性を感じるな)パッと見水滴を思い浮かべて…欲しいです。(願望)

 後の文章を読んでもらえばこの雫がもしや涙では?と思って下さる方もいらっしゃるかと思います。と言うか頼む、思ってくれ。作者的には涙なんですよ。「分からない」と言われても、涙なんです。(駄々っ子のポーズ)

 そんな涙の落ちる先は古びた頭蓋骨です。この「古びた」という形容詞は作者的には疑惑の残る言葉となっております。この場合、時間の経過を何処に持ってくるかによって解釈が変わる言葉になります。例えば、新品と紛う程の頭蓋骨ってどの状態か分からないですよね。取り出された瞬間を新品扱いするのか、それとも生まれたばかりの赤子の頭蓋骨を新品として扱うのかという選択肢はあると思います。

 では何故この「古びた」を使ったのか。この一言でひび割れたなどの状況を一瞬で思い描いてくれるからです。「古くなった」=「劣化した」という図式は皆さんにも納得してもらえると思います。ひび割れていたり変色していたりする状態を内包しているので、この一言で経年劣化が感じられるのです。勿論、別の言葉でも構わなくはあるのですが、ここでは他にも機能してくれないかなという心持ちで置いています。

 頭蓋骨に涙が落ちる状況は中々無いシーンだと思います。少なくとも現実では見たことも聞いた事もありません。特に猟奇的だとは思っていませんが、常識的な場面ではありませんね。一応、この構図としては頭蓋骨を胸に抱いているというものを想定しております。どういう状況?と聞かれても私はこの視点人物をそういう人だとして書いているので、その人の趣味だとしか言い様がありません。

 私は子供の頃に気に入った物はボロボロになっても捨てなくて親に怒られた経験があるのですが、この視点人物も古びた頭蓋骨を墓に入れていません。ファッション的な物ならば新しい物に取り替えて何ら問題無いように思えるので、これは心情的に手放し難い物なのだと伝わってくだされば幸いです。前半の涙滴を涙とするのならば、当然のことですがダメ押ですね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る