西暦2119年のナダ家(1)

 さらに時代は進み、その大発明から23年後である。西暦2119年には〔タイムマシーン〕も〔スピリット・ウォッチャー〕もさらなる研究開発が進み、そのどちらもが西暦2000年代初期のスマートフォン程度の大きさにまで小型化されたのである。


 もちろん、"時間跳躍"を行った際の行動は《時間航空法》により厳しく定められている。


 ちなみに、この西暦2119年になる頃には《MGL社》は《AP社》に吸収合併され、《APGL社》となり社名にかすかに名を残すだけになっていた。(ただし、《APGL社グループ》内の《MGL社》派閥の会社が後にさらなる発明をすることになるのであるが......)


 その年、ナダ家の兄弟、ナダ・タカキは中学三年生、ナダ・ヤスユキは中学一年生になっていた。彼らの新しもの好きな父親は《APGL社》の新作発表会で発表されたばかりの最新の〔タイムマシーン〕と〔スピリット・ウォッチャー〕を既に購入していた。


 〔タイムマシーン〕はスマートフォンそのもののような形状をしていて、〔スピリット・ウォッチャー〕はメガネ型となっていた。


 その日は両親とも出かけていて、タカキとヤスユキは留守番をしていた。この兄弟もまた父親に似て新しいものにたいへん興味津々であった。新作の〔タイムマシーン〕と〔スピリット・ウォッチャー〕をさわってみたくて仕方ないのである。


 勝手にさわれば、父親からきつく叱られるだろうけれども......


 しかし、幸いなことであったのか、不幸なことであったのか分からないが奇妙なことが起きたのである。いないはずの父親の部屋から話し声が聞こえてきたのであった。


 兄弟は目を見合わせると、父親の部屋に行ってみることにした。


 ドアを開けると身長1メートルくらいの太った ' ネコ ' がいた。


 ' ネコ ' は兄弟を見るやいなや、「ここは何なのじゃ?」と聞いた。そして、


「わしか?わしは大猫丸というものじゃ、若い頃は、かの藤原忠平様に小舎人童こどねりわらわとして仕えておったものじゃ」


 と大猫丸と名乗る ' ネコ ' は言った。

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