プロローグ

閲覧していただきありがとうございます。


誤字脱字とう多々ございますが、読んでいただければ幸いです。






●●●●




 深夜2時は過ぎただろうか。


 駅前の信号にもかかわらず、人の姿は少なかった。


 しかし補導されるとまずい。せっかく高校に上がったばかりなのだ。高校生活しょっぱなからつまずきたくはない。


 顔を俯かせてフードを深くかぶり、周囲に目をはしらせる。


「挙動不審か。もっと堂々としてた方がバレねぇよ」


 一緒に信号を待っていた心咲みさきに声をかけられ顔を上げた。隣を見れば肩の力を抜いてけだるげに突っ立っている。 


「それもそうか」


 こいつは顔立ちがやけに整っているから、ただ立っているだけでも絵になる。同性の俺としては、隣に立つと女性の視線が横にずれていくのが少し気になるが···。


 気付けば信号が青に変わっていた。さっさと帰ろう。


 横断歩道に踏み出す。


「あ、おい。竜···」


「ん?」


 後ろから呼ぶ心咲の声に振り返る視界の端に、まばゆい光が2つ迫っているのが見えた。



●●●●



 突然目の前で起こった交通事故のショックに、帰宅途中だった若いサラリーマンは、一瞬思考が停止した。しかしすぐに立ち直ると、車にはね飛ばされて倒れた青年に慌てて駆け寄る。


「おい、だいじょ···」


「びっくりしたぁー」


 青年はむくりと起き上がると、膝に手を付き立ち上がった。服は膝も袖もズタズタだったが、血は一滴も見当たらない。


「あれ、車は?」


「轢き逃げだったみたいだな」


 もう一人、はねられた青年の友人と思しき、コンビニのビニール袋を持った男が落ち着いた様子で答えた。


「えぇー、何それー」


「ま、ちょうど良かったんじゃないか?俺達には」


「それはそーだけどー」


 一人状況についていけていないサラリーマンはしばらく黙って二人の様子を眺めていたが、ふと我に帰る。


「きゅ、救急車!救急車呼ぼうか!?」


「あー、大丈夫お兄さん落ち着いて。俺爬虫類系の獣人なんよ。ほら、怪我してないから。んじゃお騒がせしましたー」


 はねられていた男は一方的に言い残すと、友人を連れて暗い路地裏へと消えていった。



●●●●



「アホ、気を付けろ」


「いやいや、信号無視はどーしよーもないでしょ」


 はねられていた青年、竜がフードをおろすと、うなじから背にかけて真っ赤な光沢のある鱗が生えている。竜はそれを手で撫でて消した。


「いやー、お前が弁当持ってて良かったよ。俺が持ってたらひっくり返ってグッチャグチャだったもん」


「そうならないように気を付けて運んでくれよ。ここから俺は手で持てなくなるからな」


 ビニール袋を持っていた青年、心咲は竜に弁当の入った袋を渡した。


「しっかし轢き逃げかぁー。地上はろくなことがねぇなぁ」


「まったくだ」


 そう言って灰色の夜空を見上げた二人の体には、さっきまでは無かった大きな翼が生えていた。

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