第79話 こわいいじめられっ子

わたしは人生でずっと、

いじめられてきた。

ねたまれて、いじめられていた。

顔が可愛くて、

頭が良くて、

家も金持ちで、

リッチな生活をしているから、

いじめる要素が多かったのだろう。


結婚をして母親になると、

またいじめられた。

公園で、

幼稚園で、

PTAで、

いじめられた。


みんなわたしの、

容姿に憧れ、

妬んだ。

それを証拠に、

わたしは、

男からは、常に優しくされた。


そんなわたしも、

40になって、

ついに、

夫がリストラに遭い、

働かなくてはならなくなった。


だけど、わたしは学歴も高く、

頭が良いから、

すぐになじんだ。


幸い、職場ではいじめられなかった。

仕事というのは、フェアだ。

しっかり覚えて、ミスしないで、

がんばれば、いじめられない。


しかし、わたしには同僚たち人の、許せないことが次々に、

目についた。

仕事中の私語、

数分の遅刻を繰り返す、

交通費をもらいながらの自転車通勤、

仕事の引継ぎが命令調になることなどだ。


だから、わたしは、

勤め先のコンプライアンスセンターに

直訴した。


数週間後、

わたしを含めた15人が、

全員解雇になった。


なんでも、わたしは委託業務の従事者で、

同僚の全員が、

パッケージで委託業務をしていたらしい。


わたしは入って一か月でまだ、

システムがよくわからないが、

同僚に恫喝された。


『あなたのせいだ』


はい?


わたしは正しいことをした。

わたしは悪くない、絶対に。


『どうしてわたしまで、首になるのですか』


わたしはコンプライアンスセンターに出向いた。

偉い男は、わたしに優しい。

それが鉄則だ。


ところが、その男は、冷たく言い放った。


『あなたはうちの社員ではない』


わけがわからないので、

警察に相談することにした。

おまわりさんは、とても優しい。

毎日、わたしの話を聴いてくれる。

ただ、最近、精神科への受診を勧められる。


そんなことをしている暇はない。

わたしは働かなくてはならないのだから。






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