第68話 褒め疲れ

人を褒めると良いと聞いた。

私は、割と、人の良い点に気づくから、

それは難なくできた。

『髪がきれい』

『いつもおしゃれ』

『センスが良いね』

『なんでもできてすごい』

『ありがとう』


全方位完璧に、良い点を褒めてきた。


なのに、反応が悪い。

反応?

そう。

褒められた時には、

それなりの反応が必要だと私は考える。


『いえいえ、とんでもないです』

『そんなそんな、○○さん(私)こそすごいですぅ』

『いつも褒めてくださって、ありがとうございます』

etc・・・。

いくら反応してもしすぎることはない。

こっちは全力で褒めているのだから。

なんなら持ち出しているのだから。


ゼロから『褒め』を出しているのだ。


褒められて当たり前の顔、

なんなら、辛そうな顔をする者が私は大嫌いだ。

褒めてもらったら、何かしらの反応をすべきと私は考える。

おごってもらってお礼を言わない者と同じなのだ。


私なら?

私なら、『褒め』をもらった時には、

大変な『礼』をする。

『とんでもないことでございます』

『○○さん(褒めてくれた相手)こそ、素晴らしいです』

投げられたボールは、すぐに返す。

おごられたら、おごり返す。


そのような常識のない者たちに、私は最近、

戸惑いを隠せないのである。

褒めることに大変疲れている。


ただ、私は褒め続けなくてはならない。

何故なら、運が良くなる、と聞いたからである。

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