第66話 真夜中の異空間

夜は22時半に寝るのだけど、

真夜中一時半くらいにトイレに起きる。

そして、必ず思う、というか、

あたしにささやく者がいる。


『なんで今、ここで、生きているの?

なにひとつ、夢も希望のないのに、

毎日、毎週、毎月、毎年、

出し切って生きたところで、

成長もしない、

現状維持か、マイナスすれすれの生活。

ハワイも宇宙旅行も夢のまた夢、というか、

別に、行きたいところも、

やりたいことも、

ないんだ、ほんとうは。

ほんとうに、価値がない、

この人生よ。

しいて言えば恥ばかりかいて、

よく生きているな・・・』


しつこく、トイレにまでついてきて言い続ける。


ふるいタイプの営業マンは、あたしに死を与えたがる。

あたしが死ぬと、あいつが儲かるシステム。


ふん。

死ぬもんか。


ふん。

お前になんか、儲けさせてたまるか、

ハイエナ営業マンよ。


『ああ、嬉しい。

ああ、かわいい、

ああ、幸せ、

ああ、あたしは生きて、息をしているだけで、

世界に光を与えられる。

ありがとうあたし

ありがとうあたしのすべて

ありがとう

ありがとう

ありがとう

あり・・・』


あたしは再び眠りについて、

幸せな朝を迎える。



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