第33話 確認する女

あたしのこと、どう思ってる?

あたしのこと、どう思ってる?


彼女は男に会うたびに聞いた。

男は心底うっとおしいと感じていた。


あたしのこと、どう思ってる?

あたしのこと、どう思ってる?


そんなことを聞く女を、いやだと思わない男は、この世にいない。

いるとしたら、それは義務や芝居に過ぎない。

相当のストレスを我慢した上での・・・。


彼女はとうとう男に棄てられた。


だからこそ、次の男にも、ますます確認しなくてはいられなかった。


あたしのこと、どう思ってる?

あたしのこと、どう思ってる?


だめなら、早目に言ってほしかったから。

突然連絡を絶たれるのは、きつい。


男は言った。


『それを聞かなければ、好きだよ』


なるほど、と彼女は思った。


ただ、聞かないでいるということは、

とても苦しいことだった。

しかし、聞かなくても安心するために彼女が起こす行動は、

彼女を磨いた。

心身をいつもこぎれいにしておいた。


めでたく結婚をした。


しかし、またクセが出てきた。


ねぇ、ご飯おいしい?

ねぇ、おいしい?


男は言った。

『それを聞かなければ美味しいよ』


なるほど、と彼女は思った。

聞かなくても安心していられるように、

彼女は料理を一から学び直し、

徹底的に腕を磨いた。


彼女は『確認しない女』になろうとすることで、

ますますいい女になった。

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