第18話 留置場の女 E子36才
殺した理由?
彼があたしをあまりにも干したからです。
ひどい男・・・。
なんのかんの理由をつけて、
『普通のプロデューサーなら、このままでも使うと思うけど、
君は、こんなもんじゃないから』
あたしはその気になって、励んだのです。
バイトをして、
歌とダンスのレッスンに励んできました。
だけど、彼は若い女の子をどんどんデビューさせました。
あたしは干され続けたのです。
苦しくて、彼を許せなかった・・・。
あたしを抱いた後で、
いつものように、芸術のうんちくを語る彼を、
後ろからこれで・・・、
筋トレ用の鉄アレイで、
殴りました・・・。
・・・ただ、
殺しておいてなんなんですが・・・、
あたしが殺したかったのは、彼ではなかったのかもしれません・・・。
彼のことも、誰のことも、どうでもよかったのかもしれません。
あたしはただ、
純粋に、
高校生の頃みたいに、
河原で、
大声で歌って、
踊っていれば、それで良かったのかもしれません。
あたしはいったい、何を見ていたのでしょうか。
『どうでもいいけど、あなた、
留置所で歌うのはやめてください。
他の人の迷惑です』
そうですか、すみません・・・。
ただ、あたし、ここへきてやっと、わかってしまって・・・。
『やめてください』
あたし、デビューなんかしなくてもこうして、歌って踊って・・・、
『迷惑です』
あたし、なんだか今、幸せで・・・、
『やめなさい』
ああ・・・。
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