第15話 志村美希

『大丈夫、私達がついてますからね!』


織絵が晴樹の手を握っている。

なんだこの女は。

さっきまでの冷淡さは何処へ行った。


まさか、

この女も晴樹と?


ない話ではない。

晴樹はこの三人の男の中でもトップの収入がある。

そして離婚調停中の身、此方に都合がつけば会いたいときに会える。


顔はまあまあだが、それでも他二人に劣ってはいない。

唯一劣っている点を挙げれば身長くらいか。


元々織絵は看護師で、子どももいないからフルタイムで働いている。

病棟勤務なはずだから年収もそこそこだろう。

昔は派手な生活を送っていたと、過去飲み会でこぼしていた気がする。要は上昇志向が強い傾向があるのだろう。


そんな彼女があの冴えない夫に(ウチもウチだが)甘んじて居るわけは無かった。


このアマっ。


私は胸の裡で毒づく。


晴樹は渡さない。


晴樹は45までには部長クラスにはなれると豪語していた。

そうしたら私はこの低収入で冷血漢の誠に見切りをつけ晴樹と再婚する。


今現在私は31。晴樹は38。

七年後、遠い未来だがそれに賭けている。


織絵は今晴樹と同い年。


勝つ、私が勝つ。


その筈だが如何せん男は移ろいやすい生き物だ。


この邪魔物を排除しなくては!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る