2 関西ヤンキーは異世界で貧乏でも全く動じない。
第8話 それでいこう!
命を失うこと。それの本当の意味は誰も知らない。
11月未明、若き三名の命が失われた。
一台の原付スクーターがトラックに突っ込み、谷村和夫(21)、浦田祐奈(21)、神田拓郎(15)の三名が死亡した。
しかし、幸運なことに、その存在まで失われることはなかった。
街があった。あたりには石造り民家や、白い布一枚を屋根の代わりにした屋台などが立ち並び、車は一台も走ってはいない。代わりに、レンガが敷き詰められた歩道の上を様々な人達が歩いている、そんな前時代的ながらもどこか優しい雰囲気を感じさせる街。そこは皆の住む地球とはちょっと違う、かといって別の惑星でもない、ちょっとしたパラレルワールドのようなもの。
世界の外側、地球よりも、宇宙よりも、時間という概念よりももっと外。そんなはるかかなたの世界では、暇を持て余した一人の神がいた。彼は戯れに、宇宙という世界を作った。元々何もなかったところに空間という概念を与え、物理の法則を与え、それに時間という概念を与え起動させた。それはゆっくりと穏やかに変化する。散らばった物質が集合して惑星を作り出し、それはやがて引力を持った。惑星は光るものや気体でできたものなど、様々なものが生まれる。神はしばらくその世界の美しさを無邪気に眺めて過ごしたが、やがて惑星のでき方がある種ワンパターンであることを知る。
そして再び暇になった神は地球という、水のある惑星を作り、そこに生命を誕生させた。そんな気まぐれなシミュレーションゲームは神にとってひどくエキサイティングだった。ただの動く”つぶつぶ”だった生命はやがて意思を持ち、生きることに執着するようになり、やがては言葉を話し思考する種族まで生まれた。
しかし、そんなエキサイティングな日々も長くは続かなかった。人間が機械を作り出し、電子を飛ばして情報をやり取りするようになると、再び神は退屈した。
「飽きたの~、んー、……よし、別の世界作ったろ! そんでたまに地球からトラックで跳ねられた奴移住さしてリアクション観察したろ! それでいこう!」
そんな大いなる気まぐれで作られた世界。
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