婚約破棄させようと王子の婚約者を罠に嵌めるのに失敗した男爵令嬢のその後

春野こもも

婚約破棄させようと王子の婚約者を罠に嵌めるのに失敗した男爵令嬢のその後


私の名前はルイーゼ。ダールベルク男爵家の末娘よ。


このピンクブロンドの髪に紫紺の瞳は私の自慢。

小さな頃から可愛いと言われてきたこの容姿を武器に殿下に近づいたの。


私は愛する王子様の妃になりたかっただけ。だから殿下が婚約破棄をしやすいように計画を立てたの。


殿下の婚約者である侯爵令嬢を加害者に仕立て上げようとして、彼女に突き飛ばされた振りをしたのだけれど殿下にばれてその逆鱗に触れた。

自分で腕を机にぶつけてわざわざ痛い思いをして怪我までしたのに。


実家は取り潰しを逃れるために私を勘当して家を追い出したの。本当に酷いわよね。


祖国を出て彷徨い見知らぬ国へ辿り着いた。そこで私は私と同じように追放された貴族令嬢達と出会ったの。


皆どこか小動物のような可愛らしい容姿で髪や瞳の色まで似ているの。性格もよく似ていて皆とても天真爛漫なのよ。

なんだかとても他人とは思えなかったわ。実は血の繋がった姉妹なんじゃないかと思ったくらいよ。

そして中には「私は乙女ゲームのヒロインなのに」とよく分からない事を言う子もいたわ。


それにしても話してみたら皆お馬鹿そうでびっくりしちゃったわ。彼女達の頭の中はお花畑なんじゃないかしら。

私? 私は皆とは違うわ。だってちゃんと現実を見ているもの。


私達はすぐに意気投合したわ。このままでは私達はのたれ死んでしまう。

だからそれぞれがこっそり実家から持ち出した宝飾品を売り払ったの。そしてそのお金を集めて皆で小さな酒場を開いたのよ。


酒場の名前は私の名前を付けてもいいって皆言ってくれたわ。なんとなく語呂がいいからですって。

看板もつけたのよ。いくら修理してもすぐに文字が掠れて読めなくなってしまうけれど。これはうちの酒場の七不思議のひとつよ。


私達の酒場は開店してすぐに可愛いウェイトレスがいると評判になったわ。

繁盛して段々大きくなって今では王国一の酒場になったのよ。


毎晩たくさんの冒険者達が来てくれるわ。男性達は皆私達に会いに来るの。

え、冒険者の紹介? しないわ、そんなこと。何か面倒なことがあったら責任取れないじゃない。


この間は異世界からこの世界に転移した冒険者が来てくれたのよ。勇者召喚に巻き込まれてしまって自由を求めてお城から出たんですって。

黒髪黒目のエキゾチックな見た目にドキッとしたけれど、やっぱり私は金髪碧眼の王子様が大好きだわ。


ああ、早く王子様が私を見つけて迎えに来てくれないかなぁ……。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

婚約破棄させようと王子の婚約者を罠に嵌めるのに失敗した男爵令嬢のその後 春野こもも @yamadakomomo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ