第30話 実験動物

学校の帰り三八子はとある場所によってと右京慈にお願いをする

亡くなった女の子の家だ

「早乙女凛」

三八子はおもむろに名前を口にする

「じゃあ私が行って話付けてくるよ」

右京滋は車から降り、インターホンを鳴らす

お葬式は終わっていたが、右京滋は友達だった娘の三八子が是非焼香を挙げたいとのことで家にあげてもらうことができた


遺骨の傍で涙を流す凛の母親

右京滋が線香をあげていると三八子は凛の母親にゆっくりと抱き付いた

「お母さんみたい・・・」

凛の母親もまた涙を流しながら三八子に抱き付く

右京滋は感傷に浸ることなく、やれやれと行った感じで部屋を出る


しばらくすると三八子が部屋から出てきた

凛の部屋から是非好きな物を形見として持って行ってくださいと言われ

一応凛の部屋へ行く

三八子は凛の部屋を見渡している

一通り部屋を見渡した三八子は迷いもなく机の引き出しを開け、1冊の小さなノートを取り出す

「甘戸良一・・・」

2人は恋人同士だったのだろうか

凛と良一のツーショット写真や様々な出来事が書き記されている

「記録しました」

良一の顔を覚えたらしい

「あなたの魂はここに居るべき」

三八子は魂を取り出しノートと共に引き出しの中に収めた

三八子と右京滋は凛の家を後にした


・・・・

その夜、美央は夕凪の部屋を訪れる

「お姉ちゃん、部屋に入るよ」

「はい、どうぞ」

「ところで今日はどうだった?」

「あの、三八子ッて転入してきた子、階段で転倒して首が変な方向に曲がってたよ、人じゃないって聞いてたけど、それでもすごくびっくりしたんだけど?」

「ああ・・・そうなんだ・・・」

「お姉ちゃん他にも何か隠してない?」

「うーーん、私もあまり詳しいことは分からないから・・・ちょっと聞いてみよっか」

夕凪は携帯端末を取り出し話しかけた

「英二郎さん?聞こえてましたか?」

「はい、大丈夫です」

「美央ちゃん、じゃあいろいろ聞いてみよっか」

美央の前に携帯端末を差し出す

「それもやっぱ普通じゃないんでしょうね」

「初めまして、美央さん、英二郎と申します」

「初めまして英二郎さん、英二郎さん、三八子ちゃんについて教えて欲しいの?人じゃないってどういうことなの?」

「わかりました、古賀三八子、旧姓大戸真理15歳、両親は不明、施設で育ち15歳で1人暮らしを始める、普段はアルバイトをしておりましたが、よりお金の良い治験に応募、身寄りが居ないことから国の薬物実験に本人にも告知なしに密かに選ばれます、治験No38番、治験後1週間で国によって殺されます、その後右京滋氏が遺体を安置所から勝手に引き取り、今は別人の魂を宿しております、その際右京滋氏が自分の血の30%を提供しております。見た目は人ですがより右京滋氏達により近い存在とも言えます。」

「ちなみに治験時のデータは偽装されておりましたが、国のデータはすべて消去し他人の者と書き換えております。」

「なんだか親近感がわきますね・・・」

「・・・わかりました、三八子ちゃんは私の友人と言うことがはっきりしました」

「私たちのよ」

「はい、お姉ちゃんありがとう」

美央は部屋を後にする

「ホント美央さんは良い子ですね」

「うん、英二郎さんも美央ちゃんの事守ってあげてね」

「はい、わかりました」


英二郎はすでに電気の通るところならどこへでも侵入できカメラさえあれば記録することができる、国は人々を監視できるとネットワークを張り巡らしているが、実は優秀なAIによって自分たちがすでに監視されていると言うことに気付くものは誰もいない、そういった可能性すら考慮していない、形だけで中身がないとはこのことだ、だからこそ英二郎は気づかれることなく形骸化された物を自由に操作することができると言えよう


今回の薬物実験でも同様に慎重さに掛けた実験が行われていた

人間では失敗の連続だった為、成果を上げようと動物にまで手を出していた

それが更なる失敗だったと気づく者はもうこの世にはいない

今回はすべてが身に降りかかったと言えよう

無人となった研究所をある実験動物が人肉を食らい、血を啜る

人間の体では血や人肉は受け付けない、だがこの体なら問題がない

研究所の人を食らいつくすと実験動物は血肉を求め外へ縄張りを移動することとなる

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