第7話 亡者たちとの戦い

これは夢なのだろうか?


真っ白い何もない場所にいる、移動することはできない


そんな中、声だけが聞こえてくる、声の主を見ようと声の方向を向くが

白く眩しくて何者かを確認することができない


「すまぬ、すまぬ、客人が居てるのにウトウトしておったわ」


「おや、お主はまだいたのか?」


「いや、うーん、2回目か」


「そうか・・・人間界ではすでに20年位経っておったか」


「どうやら石の正当な後継者に出会ったようだな」


「肉体が崩壊せぬように損傷した部分を幽界へとどめておったのじゃが、お主がそこの世界へ行ってしまえば、それも意味がなくなるだろう」


「どちらにせよ、お主はまもなく肉体の死を迎える、じゃが魂だけは助けてやろう、我からのご褒美じゃ快く受け取るがよい」


「そして安心してその石を少女に託せ」


「どなた様か存じませんが、私の命よりあの少女たちをお救いできないでしょうか?」


「ああ、そうか主はここで退場するから、経過が分からないか、安心しろ石を託せばすべては解決する」


「・・・分かりました、その言葉信じます」


「うむ、では安心して死ぬがよい」


白く眩しい光に包まれる、なんだか暖かく心地が良い

死への恐怖が消えていくようだ



20体程の亡者たちがアルファ達に襲い掛かろうとしている


「英二郎さんはまた気を失ってしまったようだな」


「お嬢ちゃんは、英二郎さんのそばに居てあげてください」


「あの亡者たちは自分達でなんとかします」


「デルタ!ガンマ!いくぞ」


「おうよ」


アルファ達と亡者たちの戦いが始まった


アルファ達に比べると亡者たちは意外なほど弱い、死人故に力もなく、骨と残った肉でかろうじて刀を持ち上げている


初撃さえ躱せば隙だらけだ


「アルファ、これなら何とからりそうだな」


「ああ、今のところは大丈夫だが、ただ後ろにあの男が居る限り油断ができない」


亡者たちは力も無く確かに弱い、しかし、この世界においての亡者を倒すすべがない、倒しても倒しても起き上がってくる、手や足をもぎ取っても繋ぎ合わせてくる、時には千切れた手足の取り合いで亡者同士が争っているくらいだ


「んー、やはり亡者たちの戦いは醜くて臓物の臭いもひどいな」


「この程度の亡者ではこのあたりで限界か・・・、私の血を吸わせるとしようか」


男は刀の先で指を刺し、1滴の血を刀に吸わせる、すると亡者たちとはまるで比べ物にならないほどの立派で赤い鎧を身にまとった武者が現れた


男は赤い鎧を着た武者に刀を渡す、恐らくこの刀の正当な持ち主なのだろう


武者は受け取った刀を腰に身に着け、代わりに亡者たちが落とした槍を持ち、亡者たちが邪魔だと言わんばかりに槍で薙ぎ払う、薙ぎ払われた亡者たちは腐肉を散らしながら飛び散っていく


「こいつは流石に抑えきれないかもしれないな」


「ああ、だが逃げるわけにも行かないし」


「いよいよ、馬事急須か」


アルファは男との戦闘のためにテーザー銃を温存していたが、そうもいかない

出力を最大に上げる、それを見た2人は覚悟を決める


テーザー銃の射程は10Ⅿ、槍は4Ⅿ、射程的にはこちらが有利だが

確実に当てるには一つしか方法はない


アルファはじりじりと距離を詰める


そして槍の射程へと入った瞬間、槍の突きが襲う


アルファは脇で槍を掴めることに掛けたのだが、現実は違った

槍は予想以上にしなりながら軌道を変えアルファの腹部を貫いた


アルファは膝をつく


それと同時にアルファもテーザー銃を発射しており、鎧武者に命中していた

鎧武者も膝を地面に付き、動きが止まっている


つかさず、ベータがスタンロッドで追い打ちを掛けに行く

ベータが鎧武者を殴ろうとした瞬間、ベータの動きが止まる


それは早すぎて見えないほど一瞬の出来事だった

居合だ、ベータは血を吹き出しながらその場に崩れる


地面に倒れたベータに亡者たちが血肉を求め群がる


「うおおおお!!!」


アルファは叫ぶ、長年の友人であるベータを例え死体となろうともこんな場所へ置いてはいけない

アルファは力を振り絞って槍を抜き取り

ベータに群がる亡者にタックルをし亡者たちを吹き飛ばしていく

ベータの前に仁王立ちしたアルファに対し鎧武者の一撃が迫る

アルファは死を覚悟した


次の瞬間


今まで赤かった空が一気に晴れ青空となり、枯れた草木の景色から、生命溢れる草原へと変わっていた

腐肉をまき散らした亡者たちには草が巻き付き、彼岸花へと変わっていく


赤い鎧武者も草が巻き付き動きが止まっていた


鎧武者の後ろにいた男もある方向を凝視している


アルファも男の見る方に振り向くと、英二郎や夕凪の傍に3人の狐の面を被った人物が立っていた

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