第15話 スケルトン

 

 次から次へと入ってくるスケルトン。

 しかし、もう連携は出来ていた。

 鎧君が盾となり、入り口で押さえ込み。

 俺と猫で頭蓋を撃ち抜く。

 俺のポケットの中の銀玉は無数に有る、早々に無くなる数じゃない。

 そして、猫の弓の矢……不思議な事に無くなる気配が無い、オモチャの矢筒に常に3本が刺さってる、ソレを撃っても次に引き抜くときにはまた3本だ。

 それもたぶん、委員長の思い込みなのだろう。

 俺の後ろに隠れた委員長を見る。


 「委員長も戦って見れば? 折角のブーメランだし」


 「私にそんなの出来るわけ無いじゃない」


 イヤ……そうじゃない。

 そこは思い込んでくれないと。

 「じゃ……魔法とかは?」


 「無理よ! そんなカード見付けてない」


 何故だ? 猫とか鎧には無茶な思い込みをしているのに、自分は駄目なのか?


 「まだ戦える様なカードが無いのよ! 私だけ」


 戦えないと思い込んでいるのか!

 でも、思い込みで戦えると教えても、わかった上で思い込めるモノなのか?

 知ってしまえば、猫と鎧も戦え無くなるのでは?

 思い込めなく成ってしまえばソコで終わる気がする。

 どうなんだそれは……。

 ややこしい能力だ。

 すべてが委員長次第なのか。






 あらかた倒したのだろう、もう気配が無い。

 そして、カードも無い。

 結構な数を倒した筈なのに1枚も出なかった。

 不思議な事に剣と盾も残っていない、鎧君が拾った一揃えだけが有るのみ。

 

 「ヤッパリ……カードも出ないわね」

 溜め息の委員長。

 「私だけがカード無しなのね、もうこのまま出ないんじゃ無いのかしら」


 成る程、これも委員長の思い込みのせいか。


 「そのうちに出るんじゃ無い?」

 顔色を伺いつつ。

 「そのうちに大量にドバドバって感じで……」


 「そんなにうまくいく筈無いじゃない」


 「いや、ソコは前向きに」


 小さく肩を竦めて、無言で廃屋を出た。


 駄目だ、完全に諦めてる、てか出ないと思い込んでる。

 無茶苦茶まずくないか?

 この世界の根幹の部分じゃ無いのか? カードって。

 それのみでレベルアップしている様なモノなのに、このままじゃ進化しようがない。

 魔物はこれからドンドン強く為るだろうに、このままじゃ終わる。

 なんとかしなければ。


 「もう後はボスを倒すしかないわね、骸骨みたいな気味の悪いのがウロウロしてるなんて……ここは趣味が悪すぎるわ」


 「ボスは……流石にカードを落とすよね?」

 嫌な予感、これでボスまで落とさないとなったら、ここから出られない。


 「そりゃ、持っているでしょ……でないと帰れないじゃない」


 そこは大丈夫なんだ、一安心だ。


 「ここのボスはどんなだろう?」

 思い込みを変えるナニかの切っ掛けは無いものか?

 取り敢えず出来るだけ会話だ。


 「巨人の骸骨……なんて居ないわよね」

 ウーンと、考え。

 「骸骨を呼び出した魔女とか?」

 

 「魔女?」


 「そう、ネクロマンシーとか言う魔法で死者を呼び出す感じ?」


 「幽霊とかも?」


 「有りそうね……」

 頷いた委員長。

 なんだか嫌な顔。


 しまった? 

 失敗した?

 墓穴を掘った?

 まさかね、ボスとか魔物までは思い込みでも変わらないでしょう。

 流石にね。


 袖を引く鎧君。

 見れば、壁の中から半身の透けた足の無い人間が浮いていた。

 「出た!」

 明らかに幽霊だ。

 だが、そのものの怖さより委員長の思い込みスキルの方が勝っている。

 「不味いぞ! 不味い」


 俺の呻きに、遅まきながらに気が付いた委員長。

 幽霊を見て「キャ!」っと悲鳴を上げて、建物から飛び出した。


 「何処へ!」


 返事が無い、ただ走るだけ。

 「幽霊はイヤー」

 パニックか?


 「今さっき自分で幽霊もっていってたじゃないか」

 追いかけながらに。


 「それは嫌だと思っただけよ!」





 走りに走った委員長。

 町を抜けて、反対の森の中にまで逃げていた。

 流石に息が切れたのか荒い呼吸で座り込む。

 

 途中、幾度も骸骨に出くわしたが、その都度、俺か猫が倒している。

 そして、倒したモノからカードも見付けていた。

 ソレを拾ったのはランプちゃんなり鎧君なのだが。

 委員長の意識の外だと、その影響は受けないらしい。

 少しはマシな展開だが……毎度毎度パニックに為ってもらっても困りものだ。

 

 ソレよりも差し迫っては、幽霊の倒し方だ。

 骸骨に交じって現れた幽霊。

 パチンコの弾も矢も巣通りだ、勿論、鎧君の剣も。


 「幽霊って弱点は無いのか?」

 ランプちゃんに聞いてみた。

 

 「そうよ! 癒しの力よ!」

 委員長が叫ぶ。

 「あんたの唾を吹き掛けてやれば良いのよ!」


 「成る程……」

 何が成る程なのかはわからないが、ここは同意しておけば弱点が確定されるだろう、そう考えての肯定だ。


 「で、拾ったカードはどんなの?」

 ランプちゃんと鎧君が其々差し出して見せてくれた。


 「ナニよ……あんた達、また拾ったの?」

 悔しそうな顔になる。

 

 しまった、委員長の見てない所で声を掛けるべきだったか。

 だが、今更だ。

 と、其々を見る。


 鎧君のは、竹槍を持った男が走る形の人形とその背後に影が点線で描かれている。

 良くわからないが、絵面的にはワープとか?

 ……たぶん、違うんだろうな。

 取り敢えずは鎧君の額に当ててやる。


 ランプちゃんのは分かりやすい。

 魔力X100と有る。

 俺の威力100と同じ系統だろう。

 ランプちゃんの使える魔法は、マッチの炎と、癒しの唾だから……。

 ソレがどうなるのだ?

 まあ良い、パワーアップには違いない。

 額に当ててやる。

 

 早速に鎧君、新しいスキルを試している。

 中腰のような姿勢で踏ん張り、そのままの形で一寸だけ前に移動する。

 ほとんど瞬時に移動はしているのだが、ほんの少しの距離だけだ、一・二歩ってところか?

 ソレを何度も繰り返している。

 

 「スキップしているみたいだね」

 見たままをそのままにの感想だ。


 鎧君、少し悲しげに肩を竦めた。

 「チョッとしか、進めません」


 「そのうちに慣れれば、移動する距離も延びるのでは?」


 「十分じゃないか」

 猫が口を挟む。

 「ソレは俺が欲しかったくらいだ」


 確かに猫の細剣なら構えたままでスキップすれば、剣を振らずとも攻撃出来そうだ。

 なら、骸骨から奪った鎧君の剣は?

 見れば、ソレは斬ると言うより撲る為のモノの様だ。

 刃どころか鋭さそのももが無い。

 剣の形はしているが、ただ重い鉄の棍棒……そんな感じだ。

 それでも撲られれば十分に痛いのだろうけど。

 

 そして、俺の横ではランプちゃんが指先に火を灯していた。

 ソレを「エイ!」と振ると、ヒョロヒョロと火の玉が飛んでいく。

 火、自体は何時ものライター程と代わり無いので、攻撃力は無いのだろう。

 魔力100と言っても、何が100に成ったのか今一わからん。

 回復はどうなんだろう?

 唾を付けられても、どこも怪我をしていない今はそれも確かめられない。

 たぶん……大した変化は無さそうだ。


 今回は猫だけがカードを取り損ねたが、これ等を見るにそんなに悔しくも無いだろう。

 実際、笑っていた。


 委員長は1人ブツブツと言っているが、これは自分のせいでも有ると思うのだが。

 しかし、それを踏まえてもどう声を掛ければ良いのか。


 あれ?

 「そう言えば、フクロウは?」

 さっきから見掛けない。


 「居るわよ」

 そう言って、背中のバックを指差した。


 それをそっと覗いて見る。

 居た。

 中ですっかり寝てしまっている。

 この子も、方向以外は役立たずだ。

 何の進歩もない。

 ってか、その方向さえも俺を指すしかないのに。

 居ようが居まいが関係ないか。


 「でも、スケルトンも倒せばカードを落とすみたいだよ」


 「そりゃ、魔物だもの」

 鼻で息を吹き。

 「ただ、私には無いのよ! 落ちないの!」


 その変な思い込みさえなければ……。

 まあ、確かに運は無い。

 あのドンキホーテのカードを拾った時点で最悪だろうしね。

 

 うまく使えば、最強なのに。

 委員長とは、相性が悪すぎたか。

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