表と裏

二と三と一

第1話

毎日が過ぎていく。

肌寒さを感じる秋の朝、雨が降っていて夢心地のわたしは憂鬱だった。

窓から差し込む真白な光、雨独特の湿気た空気に秋の寒さ。どれ一つでも出勤日であれば憂鬱だったに違いはない。

重たいまなこをあけて足を引っ張る布団を引き離し、今日を始める。

そんな朝で日々と違ったのは職場についてからだった。

「どうしたの今日は休みだよ?」

職場の先輩にそう言われた。周りの先輩方も

「そんなに仕事がすきなのか」

と笑われながら準備万端な自分を見て楽しくなった

「確かにそうかもしれません」

私も笑われながらそう返した。


結局、朝の憂鬱は無駄におわり私は帰りの電車で鞄にしまっていた本を取り出しいつもの左側の扉にもたれかかりながら読み始めた。

雨の軽く叩く音と、朝が始まっていく喧騒音がいつもと違う感覚になってむず痒く感じた。

やがて電車は一駅、二駅と進んでいく。

私は本を読んでいてふと剥離した。

私と私がだ。

アウトサイドの私とインサイドの私だ。

アウトサイドの私は客観的になり、本を読んでいる私が白色に周りの乗客が灰色に見えた。

「インサイドの私」はそんな「アウトサイドの私」に「僕は異世界に行くのに忙しい」と言って本の中に入ってしまった。


余りにも奇妙な感覚。初めての認知だった。私が私と別れたのは。


実は昔から剥離をしていたのかもしれない。


夢とは違う。私と言う人格が分裂し右脳と左脳で活動しているかのような。


やがて電車は自宅の最寄り駅にたどり着き剥離した私は私に戻らなかった。

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