イジメの矛先

翌朝、制服を着て学校に向かう前に鏡に祈った。

「友達ができますように」

自分が暗いからいけないんだ。

堂々としていなきゃ友達なんてできるはずもないし、イジメられるだけ。

よしっ、行こう!

鞄を手に取り、学校へ向かう。

学校へ向かう途中、桜並木を歩いてるとあの二人組に会った。

「おはよう」と声をかけると無視された。

そうだよね、うまく行くはずないよね。

後ろから肩を叩かれた。

「オッス!橘、元気か?」

幼なじみの吉井冬馬だった。

「なんか今日は元気みたいだな、最近イジメられてないか?」

イジメられてることは内緒にしてある。

母親に知られたくない。

「おはよう!イジメなんてないよー」

冬馬の母親と私の母親は仲が良い。同級生同士だったからだ。

あの二人組にイジメられたきっかけは冬馬と仲がいいことが気にくわないという理由だった。

「なんか言われたら俺に言えよ!退治してやるから」

そういう冬馬が好きだ。

教室に入り、席に着いた。

机の中を探ってみたが、画ビョウは入ってない。ノートや教科書も無事だ。

「おはよう」

クラスメイトとはあまり話さないが勇気を振り絞って声をかけてみた。

「おはよ!」

いつもは無視しているのに今日はしてくれた。嬉しい・・・。

クラスの中心の平田と手塚がまだ来ない。

さっきすれ違ったのに何をしてるのだろう。

授業が始まっても来なかった。

先生に理由をそれとなく聞くと

「2人はちょっと保健室にいるわよ」

保健室に・・・・?

具合でも悪いのだろうか、様子を見に行くべきだろうか。ううん、あの二人組には近づきたくない。

「橘さん、悪いけど一緒にこれ運んでくれる?」

いつも話さない一匹狼的な夏木幸子が近寄ってきた。

「うん、わかった」

資料室まで荷物を運ぶと幸子はぶっきらぼうにお礼を言った。

「困ったときはお互い様だよ」

いつも困ってても助けてくれるのは冬馬だけだった。

「橘さんてさー、平田と手塚に何かしたの?

」幸子に問い詰められた。

「なにもしてないよ。多分私が暗いからいけないんだよ」

そう。暗いというだけでイジメられる、そういう時代なのかな。

「今朝、下駄箱で橘さんの上履きをイタズラして焼却炉に捨てようとしてたから止めたんだ」

あっ、そういえば少し汚れていた気がする。

「あいつら、ガキみたいな事をするからヤキ入れてやったから。少し脅かしたら自分達で転んでんの!超ウケたわ!」

だから保健室に行ったのか。

「ありがとう」

幸子の手を取り、お礼を言う佐奈。

「また、何かあったら私を呼びなよ」

「うん、ありがとう」

初めてクラスメイトに助けてもらった。

教室に戻ると平田と手塚ごいる。私をすごく睨んでる。怖い・・・何かされるのかな。

「ちょっと橘さんいい?顔を貸してくれない?」平田達が言う。

「ちょっと、橘さんに用なら私を通しな!」

幸子がかばってくれている。

「はぁ、なんなの?あんたには関係ないでしょ?」平田は幸子の肩を叩く。

「友達なんだから放っておけないんだよね」

友達って言った・・・?

佐奈は信じられなかった、幸子が自分の友達でいてくれていることを。

「根暗同士、仲良くしてれば?」

手塚が口出しする。

「おい!お前らいい加減にしろよ!!」

冬馬が止めに入った。

「平田と手塚さー、いい加減にしろよ!」

学級委員でもある冬馬が止めに入るとクラスの中が静まりかえる。

予鈴が鳴ると数学の授業が始まった。















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