前のエピソード――第13話　フールフール嘘が降る

　昭和のテレビアニメ『キューティーハニー』（一九七三年）において、主人公の如月ハニーが特殊能力で変身する姿の一つに、旅客機の客室乗務員（キャビンアテンダント、またはフライトアテンダント）がありました。そのいでたちはお色気溢れる超ミニスカで、子ども心に嘘臭いなぁ、狙ってるなぁと思いつつ観ていたものです。

　しかし後年になって、ＪＡＬ（日本航空）が一九七〇年に森英恵デザインのミニスカート型制服（ひざ上八センチ）を採用していたと知り、目が点に。キューティーハニーの七変化は、当時最先端のファッションを大胆にディフォルメした姿だったんですね。あざとさを疑って申し訳ございません。

　一九六〇年〜一九八〇年代にかけて、旅客機の客室乗務員は女の子の憧れの職業。容姿はもちろんの事、外国語や人命救助など特殊スキルが求められる為、必然的に高収入。まさしく雲の上の存在でした。

　当時の呼称はスチュワーデスで、その人気にあやかった航空業界ドラマが続々とテレビ放映。一般的には東宝の『アテンションプリーズ』（一九七〇年）、大映テレビの『スチュワーデス物語』（一九八三年）が有名ですね。『アテンションプリーズ』の方は二〇〇六年にフジテレビが上戸彩主演でリメイクした為、覚えてる人も多いでしょう。

　同局制作のシリーズは他にも『スチュワーデス刑事』（一九九七〜二〇〇六年）がありまして、そちらも好評でした。訓練生の青春群像ではなく、ベテランのスチュワーデス達によるコメディタッチの二時間サスペンス。

　しかしながら、バブル期から平成を経て令和に突入した現在、客室乗務員を取り巻く環境は厳しさを増しております。航空会社の経費削減による給与の低下、待遇の悪化、正社員募集の減少等など。近年ではマナーの悪い乗客やクレーマーの対処に当たるイメージが強く、ブラックな職場で苦労しているといった感が拭えません。

　今でも花形職業には違いありませんが、女の子達の憧れからはだいぶ外れているのではないでしょうか。そういった事情を赤裸々に描いたテレビドラマは、まだ観た事がありませんね。

　現状を憂うとキリがないので、話を昭和の頃に戻しましょう。一九八〇年代、地元のテレビ局は夕方の時間帯に、アニメや海外ドラマの再放送または本放送をよくやっていました。

　ＨＴＢ（北海道テレビ放送）においては『機動戦士ガンダム』再放送の一時間前に、海外ドラマをあれこれ放映。その中には、かなりマイナー寄りな作品『Flying High（ザ・スチュワーデス）』（一九七八年）も含まれてました。その後の再放送はなかったはずですし、この作品について覚えてる人はごく少数のはず。

　何しろ当時の裏番組は、ＵＨＢ（北海道文化放送）で放映されていた東映特撮版『スパイダーマン』（１時間２話構成）。殆どの人がそちらに釘付けだったに違いありません。

　これは調べてみて判った事ですが、海外ドラマ『ザ・スチュワーデス』のタイトルはおそらく北海道限定のオリジナル。本州方面での邦題は『アメリカン・ガールズ２　女のエアポート』となっています。今ならコンプライアンス的に苦情が来そうなネーミングですが、そういう時代だったので仕方がありません。

　ストーリーに至っては『チャーリーズ・エンジェル』の劣化版と言うか、スチュワーデス三人娘が恋や冒険に奮闘、時には機内トラブルの解決に尽力するといった内容でした。お色気ショットやアクションのバランスを考えると、少年ジャンプに連載されていた漫画『キャッツアイ』に近い世界観かも。妙にゆるくて明るいのです。

　吹き替えキャストもエピソードの詳細も忘れてしまいましたが、最終回辺りで機長のキャプテン・マーチが、三人娘に盛大なセクハラを働いていた場面はよく覚えています。

　不意の事故で失明しかかったマーチ機長が、とっくに回復してるのに甘え倒して、ついには目が見えない振りをして彼女らの浴室に侵入。ラストでは制裁が下ったんだっけか？　肝心なオチのみ、忘却の彼方です。

　実際、本編の吹き替え音源くらいカセットテープに録音しておけば良かったですね。昔はビデオデッキが高価で一般家庭に普及してなかった為、テレビドラマの視聴は一期一会。記憶を呼び起こす素材が少な過ぎて哀しくなります。

　三人娘とマーチ機長の吹き替え、どこのどなたが担当していたのやら。