小説書くことだな

「先輩なんか得意なものとか好きな物ってないんですか?」


俺がルナの罵倒に苦しみながら書いているとブルースカイが突然俺の好みについて聞いてきた。

なんだ? 俺の誕生日はまだ先なんだけど。

まぁ何かくれるって言うならもらってやらんこともない。


「そうだな、甘いものが好きだな」

「どうでもいいわ、そんなこと」

「いや、聞かれたから答えただけなんだけど」


何なの、こいつ。

俺にキツイ言葉かけるの癖づいちゃった?

反射的にやっちゃうようになった?

それは困るな、俺もう何も発言できなくなっちゃうよ。


「小説に使えそうな趣味があるか聞かれてるのよ」


え、そういうこと?

ルナからの酷い仕打ちに耐えている俺を労ってくれるってことじゃないの?

それを確認するためにブルースカイに視線を送ってみる。


「そうですね、セレナちゃんの言ってる通りです」


否定されてしまったのでルナが正しいようだ。

なんだよ、それならそう言ってくれよ。恥かいちゃったじゃん。


「それなら今は小説書くことだな」

「全然得意ではないじゃない」

「好きなことだって聞かれただろ」

「趣味について書いたら上達するかと思ったんですけど、それだと無理ですね」


無理って何、俺だって超絶ネット小説家とそのファンのヒロインのラブコメとか書けると思うよ。

ほら、もうネタ出てきた。

これならじゃんじゃん書けるね。


「そうね、今までと変わりなさそうね」

「勝手に決めんな。今から書いてやるよ」

「時間の無駄だからやめて」

「無駄じゃねーわ!」


こいつほんと腹立つ。

そんな否定しなくていいじゃん。

時間なんてまだまだあるんだしさぁ。


「それで、先輩他にはないんですか? 例えば好きなスポーツとか」

「まぁ中学のときはバスケ部だったけど」

「どうしてやめたんですか?」

「この部を見つけたからかな」

「ふむふむなるほど。じゃあこの部がなかったら続けてたんですか?」

「どうだろうな」


なんなんだこれ、カウンセリングかよ。

そんなの頼んだ覚えないんだけど。

これで小説うまくなんの?


「そんな曖昧な答えは聞いてないわ。やってたかやってなかったかよ」

「そう言われてもわかんねーんだよ。バスケは好きだけど身長低いと試合出れねーからな」

「そうですね、先輩そんな高いわけじゃないですね。それで嫌になったんですか?」

「嫌になったわけじゃないけど試合出れないなら他の部活やろうかとも考えるだろ」


実際中学の頃は顧問の指示で身長高いやつから使われていた。

バスケは身長高ければいいと思ってる人だったからいくらスキル磨いても使われなかったんだよな。

この高校もそうだったらそれこそ無駄に時間使うことになる。

身長が関係ないスポーツがあればいいけど高いに越したことないだろう。

だから何入るかなんて決まらない。


「じゃあそれについて書きましょう。身長低いけど実はハイスペックでしたって話」

「ありきたりじゃない?」

「あなたの作品も大概ありきたりじゃない」

「ありきたりでもいいんですよ。それこそ読者はキャラや描写に目が行きます。キャラが魅力的な作品は人気出ると思うんですよね」

「それができてるなら元から人気あるでしょうけど」


そうなんだよな、ルナから罵倒ってキャラの行動か描写についてなんだよな。

それがうまく書けてるならルナだって俺にもっと優しい態度で先輩として敬っているはず。

それだとルナも可愛げあるのにな。


「まぁ書いてみたらどうですか? 好きならバスケ描写うまく書けると思いますし」

「そんな簡単かしら」

「とりあえず書いてみるよ」


自然と思いついてたの書いてたから人に勧められて書くのは初めてだな。

どんな話か考えるとこからだな。

えっと、とりあえず主人公が身長低いけど技術があるっと。

じゃあヒロインはマネージャーとか?

それでバスケ描写多めにするんだっけ?


必死に設定考えながら書いてると数日が経ち、やっと何話か書くことができた。

けどこれでいいのか?

なんか少年漫画っぽくなったんだけど。


高校のバスケ部に所属している主人公だが、その高校はスタメン入りの条件が最低百七十センチ必要。

百六十センチ台の主人公はスタメンに入れないけど技術を磨き続ける。

それがマネージャーの目に留まってから物語が始まる。

あらすじはそんな感じ。


さて、二人の評価はどんな感じかな。


「いい感じじゃないですか」

「そうね、マシになったわ」


おお、ルナから罵倒の言葉が出てこなかった。

いいもん書けたんだなってことがよくわかる。


「やればできるじゃない」


そう言いルナが笑顔を向けてきたので少しだけドキッとする。

こいつ見た目普通に美少女だから見とれてしまう。


「あれ? 先輩、セレナちゃんに見とれてどうしたんですか?」


ブルースカイがニヤニヤしながら聞いてくる。


「別に見とれてないわ!」

「別にいいと思いますよ。セレナちゃん可愛いですよね」


いやいや、見た目は可愛いけどもこんなこと言ってたらどうせ罵倒されるんだよ。

そう思い少しビビりながらルナを見ると顔を赤くし照れながらサイドテールの髪を弄っている。

は? 何その態度。

お前そんなキャラだったの?

ダメダメ見とれるな、俺は年上の母性ある女性がいいんだよ。


「そうよ、私は可愛いからあなたが見とれるのも当然よ」


……はぁ、こいつが生意気がよかった。

危うくロリコンになるところだった。


ルナも生意気だけどいい後輩だな。

これからもこのメンバーで面白い作品書いていけたらいいな。

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小説書いてたら後輩で毒舌な書籍作家さんに罵倒されている件について みなと @nao7010

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