第27話 「言葉」の役目

1度、2歳を前にした頃…息子から言葉が消えた。

喋っていた言葉と言っても


アンパンマン→アンパンパン

バナナ→バババ


…のような、簡単な一語文だったけど。。


それ以上が全く増えず、むしろ喋らなくなって…自閉症だと分かり、知的な遅れもある事がわかり、言葉が出ない意味を知った。


理由が分かっても、何か話してほしい……と毎日願っていた。


言葉。。。出てこないかな。。

初めて出る言葉は何だろう。。

お母さん…?いや待てよ、、5文字もある。。

ママ!2文字ならいけるかも!…と、私への呼び方はママと教えることにする。


そうこうしていると 療育教室へ通っている間に、いつの間にか喋っていた。

話す…というより、喋る……といった感じ。


気づいたのは、1人遊びをしている時、よく聞くと教室で覚えた歌を口ずさんでいた。

あるいは、やはり1人遊びをしている時にテレビのコマーシャルのフレーズを口ずさんでいた。。


あれ?喋ってる!!と気がついた時の私の喜び方はハンパじゃなかった。

あちこちに、「言葉がでてきたよーー!」と言い回っていた。

嬉しいな!嬉しい!言葉がやっとでてきた!

歌ってる!何か同じことグルグル言ってるけど、喋ってる!!


もちろん、教室の先生にも家でよく歌ってたり、ひとりごとを言ったりして言葉が出てきました!!と喜び伝えていた。

すると先生も喜んでくれて、「良かったね〜!嬉しいね〜!」と返してくれていた。


でも、後に教わった。


「言葉」ってね、誰かに何かを伝えたい時の手段の1つなんだよね。

息子がその時に口から出していた言葉は、伝えたい相手がいるわけではなく…あくまでもひとりごと。。だったんだよね。

だから、私がもう一度歌って?とか、なあに?。。とか聞いても知らんぷりで応えてくれることはなかった。。


つまりね、喋ってはいるけど…特に言葉にまだ意味はないのよね。

ただ記憶されているフレーズを口ずさんでいるだけ。

機械的に。。


息子の言葉は、本当に話し始めた……というのとは少し意味が違っていたようだった。

ガーン。。ちょっとショックだった。


でも息子を育てるようになって、改めて「言葉」というものの奥深さを学んだ。

今まで特にそんなに深く考えていなかったので、「なるほどなぁ。。」という新発見みたいな感覚さえあった。


「話す」とは………なんと高度な発達の1つなんだろう。。

息子の中に、「伝えたい!喜び、悲しみを共有したい!」と思える経験をたくさんしてもらい、心にその想いがあふれてきたとき…言葉として口から出てきてくれるよう、今は一緒に色んな事を経験して楽しもう!!

そう思考を切り替えた。。




程なくして……

息子は、私にある日突然話しかけてきた。

缶ジュースを手にして、「あ け て 」

と。。。


えっ、「開けて?」

あ、はい、開けてあげるよ!

と、缶ジュースのフタをあけた。。


あれ!?今のは確かに「話した」んだよね?

息子は私にお願い事を「言葉」で伝えにきたんだよね?!


あ。。。

初めての言葉、、

「ママ」じゃなかった……(;;)

……いや、まぁ、いっか!うん!いい!


3歳前頃の事だった。。














  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る