第9話 バイバイの手

誰でも「バイバイ!」と言う時は手の平を相手に向けて左右に振る。

ごく自然に手を振る。

まだ言葉が出ない小さな赤ちゃんでも「バイバイ」なら出来たりするので、何ともかわいい。


息子の「バイバイ」は少し違っていた。

「バイバイは?」と言うと手のひらを自分の方に向けて……つまり、相手から見ると手の甲を見せて「バイバイ」をしていた。


変な「バイバイ」だなぁ。。

教えても…教えても「反対のバイバイ」をしていた。


ちゃんと意味があった。

息子から見ると、人が自分にしてくれる「バイバイ」は手のひらが見えている。

だから息子は、自分が見えているのと同じように自分の手のひらは自分に見えるようにして「バイバイ」をしていたんだ。。


あっ、そうなんだ。

人は誰かのフリを真似る時、自然に頭の中でちゃんと反転させて真似をしているんだ…。

当たり前のように思ってたけど、実は脳の中では複雑な処理が行われてたんだな……


今まで当たり前だと思っていたことが、当たり前ではなくなった時に初めて人の発達、成長の神秘に気づく。


この子がいなかったら気づかなかった。


私の親としての世界を少し広げてもらった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る