第15話 新聞部の取材

 —学校の昼放課—


 教室に向かうために廊下を歩くと、移動した先に女の子がメモ帳を持って待ち構えているのが見える。


 おそらく、何かの取材のことだろうとしばし女の子の方に視線を送ると、それに気づいた女の子がこちらにやって来るようだ。


 それを気にしないふりをして通り過ぎようとしたその時、女の子から声をかけられたのだった。


「一年A組の柳木君ですよね?」


「……えっと、一体何のご用件で?」


「あ、申し遅れました。私は一年D組の南瀬みなせ胡桃くるみです」


 彼女の外見を見ると、背丈はおそらく150センチいくかいかないかで、髪型はミディアムの明るい茶髪。胸はある程度の膨らみはあるようだ。


「あの、もしよかったら、新聞部の取材に協力してくれませんか?」


「あ、はい…」


 彼の反応を見た彼女は笑顔で質問を述べた。


「それでは、あなたは普段どんな本を読まれますか?」


「文学の小説を読みます」


「その文学小説の中でどんなジャンルを読まれるのですか?」


「ジャンルは、ミステリーやフィクションだったり、恋愛ものも読んだします」


「読書はどれくらいするんですか?」


「平日は一日で三時間は読みます」


「分かりました。では、今あなたに好きな人はいますか?」


「いきなり質問の主旨が変わったような…」


「答えていただきませんか?」


 彼女が彼との間合いを詰める。


「う、うーん、今のところはいないかな…」


「そうですか、なら今朝に一緒に登校した人達とはどのような関係ですか?」


「えっと、なんでそんなことを知っているの?」


「それは、今朝だけでなく、昨日ときも二人で帰っているところを見ましたよ」


 これは昨日や今朝の時に彼女に偶然尾行されて、それを知ってのことだろう。ひとまずここは引きたい。


「僕は、この後移動教室があるのでこれで…」


 そして、彼が向きを変えて教室に向かおうとしたとき、彼女が咄嗟に彼の手を握って動きを封じ込める。


「答えていただけないでしょうか?」


 これでは、無理やり引き離して逃げようとしても、また尾行されて情報を集めかねない。


「……その、僕達は普通の関係だよ」


「本当でしょうか?」


「他に一体何があるの?」


「二股をかけたりとか」


 そのことに対して、彼は即座に否定して


「そういったことはないよ、そもそも二人に関しては恋人関係じゃないよ」


「それでしたら、一緒に下校したピンク色の髪の女の子のことはどう説明するんですか?」


「あれは、正式な恋人じゃなくて、(仮の)恋人関係かな」


「仮ですか」


「うん」


 一度、彼女は彼から視線を外して、メモ帳にペンを滑らせて情報を整理して


「事情は、分かりました。また引き続き取材しに行きますのでよろしくお願いしますね」


「…えっと、何のために僕の取材をしに来たの?」


「それは、秘密です」


 彼女は、この場をすぐに立ち去り、一人廊下にたたずむ。



 


 そして、学校の授業が終わり、彼女と一緒に下校するときのこと。


「柳木君はどんな委員会をやるか決めた?」


「うん、一応決まったかな」


「何にしたの?」


「一学期と同じで緑化委員会にしようと思う」


「そっか、私もそれにしよっかな」


「他の委員会にしなくて大丈夫なの?」


「私が緑化委員会じゃダメなの?」


「ううん、ダメじゃないけど…」


 そして、ちょくちょく後ろにいる彼女のことが気になりつつも、気にせず前へ歩く。


「そうだ、今度の土曜日は予定空いてる?」


「特には」


「なら、一緒に遊園地にも行かない?」


「うん、いいよ」


「ほんと!それじゃあ遊園地に向けていろいろと決めていかないとね」


 彼女の表情を見ると、なんだか楽しそうな顔をしている。


「柳木君は、どこの遊園地に行きたい?」


「姫菜さんの行きたいところならどこでもいいよ」


「遠慮はしなくていいんだよ」


「うーん、それなら二人で一緒に調べて決めるのはどうかな?」


「うん、そうだね」


 そして、駅のところまで二人で遊園地のことでたくさん話し合ってから、それぞれ別の道に進むと、後ろで尾行し続けた彼女が僕の目の前に姿を現した。


「彼女さんと遊園地に行くそうですね」


「うん」


「あ、それとあなたに手紙を渡すように言われたのですが」


「誰からの手紙?」


「それについては私の口から言えませんが、とりあえずその手紙を受け取っておいてください」


 彼女から受け取ったのは、丁寧に折られた白い封筒の手紙のようだ。


「それは、家に帰って読んでおいてください」


 そして、その白い封筒をカバンの中にしまう。


「それでは、ここで失礼します」


 彼女は、この場から立ち去り、彼も改札口に入り、自宅へと帰っていった。

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