第3話 タイムマシン作った自転車整備士とIQ5兆4億光年の少女

 数時間後――


「マジで作ってしもうた……タイムマシン」

「当然でしょ! IQが5兆4億光年を越え最強の私にかかればこんなものよ!」

「そう言えば宇宙人の姉ちゃん。億光年は距離や! IQに付ける値ちゃうで!」

「……え?」

「え? やないで、まさかボケとちゃうんか?」


 先ほどの人工衛星のような乗り物を二人で協力しタイムマシンへ改造した。


「まあええわ。ほんで宇宙人姉ちゃん――」

「シャルト・ベリー・ルージュ様よ! 人の名前も覚えられないなんて全く低脳ね!」

「うーん、じゃあ短くしてシャベルちゃんやな!」

「シャベル!? 馬鹿にしてるの!」

「このタイムマシンを使って、どうするんや? あとワイに手伝えることはあるんか?」

「……これからこの世界を修正しに行くのよ。アナタが出来るのはここまで」

「そっか……なんや短い間だったけど、濃密な経験やったわ。ありがとうなシャベルちゃん」


 タイムマシンに乗り込もうとするシャベル。その背中を見送るツルハシ。

 だが、シャベルは立ち止まり振り返った。


「ねえ! 何でアンタ、私を助けてくれたの? 見ず知らずで明らかに違う世界の住人の私を!」


 何か不安そうな表情を浮かべるシャベル。


「何でって、そりゃあシャベルちゃんが困ってたからやで?」

「そ、それはわかったわよ……つまりあれでしょ? 見返りがほしいんでしょ?」

「いや、いらんで」

「も、もも、もしかして私の体が目当てなの!?」

「それもちゃうって!」


 そこまで言うと、ツルハシが溜め息を吐く。


「あんな、別に見返り求めてる訳ちゃうねん。ワイがシャベルちゃんのこと助けたい思うただけや。困ってた顔してたやん。ほっとけへんって思うたんや」

「私が困ってたから……わかったわ! 私の弱みに漬け込んで良いように言うことを聞かせようとしたのね! そして、その……私の体を好きなように――」

「もう、ええわ!」


 二人がやり取りしている刹那、突如として黒い車達が彼らを取り囲む。


「な、なんやなんや!?」


 狼狽えていると車から黒服にサングラスをかけた屈強な男達が、車を遮蔽にし銃らしき物を向けてきた。


「そこの二人、動くな! 手を上げろ!」

「な、なんや自分ら!?」

「その水色髪……貴方はだな? 一緒に来てもらおう」


 一人の黒服の男がシャベルへ銃を向けた。

 シャベルは溜息を漏らす。


「まったく……どれだけ頭が悪いのよ、この世界の生き物たちは……」

「シャベルちゃん! なんやコイツら知っとるんか!?」

「知ってる訳じゃないけど察したわよ。コイツらは貴方達の政府の回し者。そうでしょ?」

「ああそうだ。空が割れたということは我々の世界の終焉も間近ということ。どうか、上層人の知恵をお借りしたい。手荒なマネはしたくないんだ。一緒に同行してもらえないか?」


 彼女は鼻で笑う。


「ここは馬鹿ばっかりね。自分達が救われたいのなら、邪魔をしないことね」

「同行を拒否するのか?」

「言葉で言わなきゃわからないの? 今急いでるのよ!」

「……ならば、ちからずくにでも」


 男達が銃を構え直したその時だった。


「シャベルちゃん! ここはワイに任せるや!」


 ツルハシが彼女を庇うように前へ出た。


「あ、貴方何をして!?」

「ええから、はよ逃げ――」


 その刹那、一発の破裂音が響き、ツルハシの意識も消え去った。

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