南九州一帯を舞台とした歴史もの……というには言葉が足りないです。古代の神話をイメージさせる不思議な力を駆使して、作者さまの筆力で限りなく史実に寄せてきた華麗なる歴史ファンタジーといったところでしょうか。
特に飛び抜けた主人公感のある人物がいないですが、どれも魅力溢れる描写で綴られているので、山育ちの面々・城持ちの大名一家・その他親戚縁者、きっとお好みの人物を推しに挙げることができるかと思います。愛宕は伊吉という男の子の成長を見守りながら読み進めていました。純真な心を持つが故の無鉄砲ぶりが好きでした。
読み進めていくと、少しずつファンタジーの香りが漂ってきますが、和のテイストが満載で新鮮な感じを得られるはずです。タイトルの「けして泣いてはならぬ」にある理由を考えていくと、南九州で拡がった神話と文化に触れているようで、読み終えた後は「ちょっと薩摩や日向の世界にもっと興味を持ってみようかしら」と思うこと間違いなしでしょう☆
最後まで読み終えた後、少年少女たちがこの先どうなってしまうのかを考え始めて寝れなくなってしまいました。
作りこまれた魅力ある登場人物たちが織り成す愛の物語は、苛烈な戦国時代という背景もあってとても心に響きます。
そしてそこに作品タグにもあるように「不老不死」という怪異、ファンタジー要素を含ませることで、奥深く研究・考察されているこの時代小説を誰でも入り込みやすく非常に読み易いものにされていると思います。
普段、時代小説を読まない方にもオススメです。
私も普段あまり読まないジャンル(読み終えたのは「わるじい秘剣帖」くらい)なのですが、とても面白かったです。
この作品は、綿密に調べられ、丁寧に書き綴られた、骨太な大河ドラマのような時代設定が背景にあります。
その一方、「見た目は童」でも中身は?歳の女性・ふみを中心に、様々な若者たちが魅力的な人間模様を繰り広げる青春ドラマでもあります。
特に少女たちの恋模様がとても初々しく可愛らしく、重くなりそうな背景の中でも明るく爽やかな印象を紡ぎあげてくれます。
ふみの正体に迫る謎も興味深く、次へ次へと読む手が止まらなくなります。
歴史小説好きな方はもちろん、そうでない方にも確かな読み応えを楽しんでいただける、とてもレベル高い作品です。