雨女と傘男

ヨネミツ

『雨女と傘男』

「そうだな、彼女はいつもビショビショだった」

よくいるだろ、

出かけるたんびに雨を降らせる奴。

見かけるたびに雨に濡れてて、

プンプン怒ってるんだ。

町じゃ結構有名なジンクスだった。

『彼女が出かけるなら、雨は降る』

彼女の人生は雨降りばかり、

天気予報も彼女を基準に放送された。


けれど彼女は二十になった時、

親切な男の傘に入った。

男は雨降りに散歩するのが好きな、酔狂な野郎だった。


こうして雨女と傘男はめぐり会った。

傘男は雨女にすぐに夢中になった。

雨に濡れていない彼女は美しかったんだ。

二人は雨の中、デートした、

心の中は、雨よりも濡れていた。

二人は大雨みたいに愛しあった。


十月十日のその後に、嵐のような雨は去り、赤ん坊は快晴の日に生まれた。

雨女が赤ん坊を連れて町に出ても、もう、雨は降らなかった。


傘男は自分たちの子供が生まれてからずっと、ぼうっとしていた。赤ん坊を抱こうともせず、異常気象で晴れ続きの空を、手持ちぶさたに見上げてばかりいた。

そう、彼にはもう、雨の中、傘をさしかける相手がいなかったんだ。


そうして、いつの間にか傘男はいなくなった。


きっと別の町に、新しい雨女を探しに行ったんだろう。



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雨女と傘男 ヨネミツ @yonemitsu

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