第42話

正月明け、第4工場は大変な騒ぎになっていた。無理も無い、自分の工場のトップの歌がラジオで流れたのだから…



俺が仕事の事で誰かを呼び出す度に、


「TOYさん、曲とても良かったです」


「娑婆出たら絶対イベント見に行きます」


何て言われる騒ぎだ。勘弁してくれよ…お前らみたいな人相の悪い奴らが集まったら、普通の奴ら怖くなって帰っちまうよ…と思いながらも、ありがとうな、とだけ言っておいた。



工場の担当台の前のボードには1月の新しい予定表と飯の献立が貼られていた。

俺は新しいメニューは出てないかなぁなんて何気なくそのボードを眺めていた



「TOYさん、もうすぐ慰問ですね!」


『慰問?あぁ、どうせまたくだらないお笑いかなんかが来るんだろ?』


「いや、どうなんですかね…いつもだと出る人の名前も載ってるんですけど、今回は何も書いてないんですよ…」


『まぁいいや、俺はそんなのより飯の方が楽しみだ…』


「まぁ…それもそうですね!」







それから数日間、工場は何も無く、穏やかな日々が続いた。俺はイジメや飯を取る様なバッドマインドな奴を担当の親父と話して徹底的に追放した。気が付けば第4工場は、湘南少年刑務所で一番居心地の良い工場になっていた。


本来ならば罰を受けて、まだまだ4級のままな筈の俺は、その功績が買われて3級になっていた。これでメグにも月二通の手紙が出せる。何を書こうかな…なんて相変わらず手紙を書く時は部屋の全員に引かれていた。



月末も近付き、明日が慰問となった時、情報処理の工場からハトが飛んできた。

「TOYさん、何か明日の慰問は音楽らしいですよ!出演メンバーは沢山いるらしいんですけど、結局また知らない奴らばっかりらしいです。」


『だから言っただろ…期待するだけ馬鹿なんだよ。』





翌朝、せっかくの休みを慰問で無理矢理講堂に連れて行かれ、不満な表情を浮かべた面々が次から次へと部屋から出された。


講堂に着き、椅子に座るなり黙想、目を瞑らされて下を向かされる。マジでかったりぃ…まぁみんな薄目を開いて周りをきょろきょろしてるんだけどね


ふと横を見ると、笑顔でこっちに頭を下げている奴がいる。



BE-CORE…




名札を見ると第1工場になっている。罰が明けたんだ…俺は一安心した。あいつなら上手くやれるだろう。



「黙想やめー!」



偉そうな声が響いた。もうすぐ奇跡が始まる

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