第41話

『うわ…すげぇな…』


「いやぁ、TOYさん、やっぱり正月は最高ですね!」


刑務所内も12月28日から1月4日は休みとなる。

俺はメグが面会に来てくれたクリスマスの晩にケーキとローストチキンが出たのもビックリしたが、お正月におせちやお雑煮、それにお菓子が食べきれない位出たのには衝撃を受けた。


「いやぁ、自分なんか娑婆での生活はボロボロだったもんで、むしろ正月はここの方が良いかも知れないッスよ!TOYさんは正月はどうされてたんですか?」


『正月かぁ…』


毎年開かれるカウントダウンパーティー、俺はいつも先輩方に無理やりテキーラのショットを何杯も飲まされ、いつも元旦は一日中寝てた。


記憶は無いが歌ってる途中に突然無言になってステージ上で吐いたらしい。そこは上手くRATさんが


「こいつは立ち上がったライオンだが、今日だけはマーライオンだ」


なんてMCで盛り上げてくれたが、それからしばらく皆にはGERO MACHINEって呼ばれたっけ。その後はメグの車でも見事に吐いて、元旦の夜は洗車に明け暮れて…朝方やっとキレイにして2人で海行ったっけなぁ…で、また酒飲んで真冬の海に飛び込んで、風邪ひいて…


「…TOYさん、すいませんでした。」


『え?何が!…あ…あぁ』



悪い癖だ。また泣いていた。


『いやぁな…俺は最高の正月を迎えてたよ。俺は最高の仲間と、最高の彼女がいる。それだけで十分だ…うん。

なんつぅか…お前らも娑婆出たらREGGAE聞いた方が良いぜ。こいつは人生観を変える力がある。んで…ん?』


ふとラジオから聞き覚えのあるバックミュージックが流れたので俺は話しを中断した。



〜…ラジオネームレゲエ猫さんからのリクエストです。こんばんは、毎回楽しくこのラジオを聞かせて頂いております。実は私には大切な彼氏がいるのですが、残念な事にどうしても会う事が出来ません。私も辛いですが彼は今頃もっと辛い思いをしている筈です。そんな彼が一番好きというか…彼に一番聞いて欲しい曲があるのでリクエストします。どうか聞いてます様に。愛してます…いやぁ、彼氏想いの彼女さんですね!おぃ彼氏!聞いてたらさっさと彼女に会いに行きなさい!


『馬鹿野郎…行けねーんだよ…』


「え…?」





〜それではレゲエ猫さんからのリクエスト、TOY MACHINEで、DO IT MYSELF!





「まさか…」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る