第9話

それからTOYに取っては全てが初めてだらけの出来事だった。


結局弁護士と話したのは、何も争う所が無いので、後は罪を軽くして貰う為に法廷に親に立って貰うと言う事だけ。


翌日に裁判所へ行って、検事に刑事と同じ様な事を聞かれてまたまた指紋を取られた。、んでその次の日には10日間留置されると言う事を言われた。

全ては事務的。感情なんてない。奴らは六法全書が生んだ機械だ。


留置場での生活と言えば、結局あの後元の部屋に戻されて、気が付けば奴らと日常会話まで出来る様になっていた。


そして10日後、俺は再び裁判所へ連れて行かれ正式に起訴された。こうなると俺はもう容疑者ではなく犯罪者だ。


まぁ、ここまではもう分かっていたからこれと言ってショックは無かった。問題は実刑となるか執行猶予となるかだ…。


起訴されて暫くすると、俺は道玄坂警察署から東京拘置所へと移送された。同時にようやく接見禁止が解け、仲間や親と手紙や面会が出来る様になったんだ。


手紙も面会も1日一通と決められていたので、俺は親、メグ、RATさんの順に、その後は山梨レゲエ祭の出演者の方々に手紙を書いた。手紙が届くなり、みんな面会に来てくれたり、遠くの人は差し入れを送ってくれた。


そして何故か知らない人からも沢山の応援の手紙を貰った。有名でもないのに何でだろう?と気にはなったが素直に嬉しかった。



…でも肝心な親、メグ、RATさんからはいくら待っても返事は来なかった。最初は忙しいのかなと思っていたんだけど、二週間、三週間と経つに連れ、徐々に不安が募っていった。



この日もいつもの様に不味い昼飯を食ってウトウトとしていると、部屋のドアが開き、


「2897番、面会」


とオヤジに俺の拘置所の中の名前を呼んだ。


面会室に行くと弁護士だった。透明ボードの仕切りの穴から早速弁護士の声が聞こえてきた。


「この前、お父様に法廷に立って貰う様に話しをしたのだが…」


弁護士は言葉を濁しながら、要は親父が世間体を気にして法廷に立つ事を拒否したと言う事を俺に説明した。

うちはお袋と俺以外はみんなエリート。上京してから一度も顔合わせて無いし、電話番号も知らないときたもんだ。



『あ、仕方無いですね。いいですよ。じゃあ』


「…でもそうなると執行猶予はまず無理…」


『いいんです。マジでいいんです。失礼します。』










こんな時でも泣いちまうんだな…くそっ

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