「本物」の小説

「作り話」と「小説」の境目はなにか。

それは、どれだけ作者が自分の物語を「本物」と信じられるかにかかっている。

自分の妄想に他人を巻き込むには、テーマや文章の巧拙はあまり関係ない。何よりも重要なのは、描いた世界が「本物」だと自分が信じて疑わないことだ。そうでなければ、作家はみんなただの「嘘つき」に過ぎない。

嘘ばかりついている自称作家の私にとって、この本物の「小説」はあまりにもまぶしかった。

架空の国家、架空の文化、架空の政治……。にもかかわらず、それらが強い説得力を持って、読み手に訴えかける。世界のどこかで、本当にこんな物語が展開されているのではないか、と信じさせるだけの綿密な描写。二転三転する物語の構成。一本筋の通った魅力的な登場人物たち。そして、抱きしめたくなるエンディング……。

どれだけ作り込んだのだろう。
どれだけこだわったのだろう。
どれだけ時間をかけたのだろう。

内容に関してレビューで触れることはあえて避ける。みなさん自身でこの世界を堪能して欲しい。

タイトルには「嘘つき」とあるが、この小説は「本物」だ。
是非ご一読を。

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