16bitの世界篇

続・地下迷宮の章

第10話 青年は美少女と美女のビジュアルに総天然ショックを受ける

 レイトたち四人の冒険者は第四階層へと上がる。

 そこは「4096色総天然ショック」な世界だった。

 視界全体の解像度も上がっているようで、よりリアルなダンジョンが描画されている。

 移動もブロック単位であることは変わらないが、描画速度が早くストレスがない。


(CPUが8Bitから16Bitにになったみたいだ)


 というのがレイトの感想だ。

 それにともなってなのかは定かではないけれど、モンスターの種類がごっそり入れ替わっている。

 コボルドやゴブリン、オークだったものが、オーガ、ゴーレム、トロールと言った大型のモンスターに変わったため、これまでよりダメージが大きくなり、レイトは第三階層ボス・ライアンを仲間にして本当に良かったと神様と自分の選択に感謝しないではいられなかった。

 アンデッドもマミーになったことで単純な物理攻撃だけじゃなく麻痺攻撃が加わり、スパイダーはポイズンスパイダーに代わっていて、時々毒攻撃だったものが常に毒攻撃で麻痺攻撃も混ぜてくるようになった。

 戦術的には最初の攻撃は三人で行い、以降はレイトとヴァネッサが直接攻撃で敵を倒すのをクリスティーンとライアンが魔法でサポートするという形に自然となった。

 コマンド表示が変わったのも大きな変化だ。

 今までは

 「たたかう」

 「ぼうぎょ」

 「どうぐ」

 「にげる」

 だったものが

 「攻撃」

  「武器」「魔法」

 「補助」

  「道具」「魔法」

 「防御」

 「退却」

 になった。

 この階層のモンスターは基本的に生物系なので火の攻撃はとても効果があるのだろう。

 剣で攻撃するより30%くらいダメージが高かった。

 マミーにいたってはよく燃えた。

 そう、なぜかマミーだけ燃えるグラフテックが用意されていたのだ。


(どういうこだわりなんだろう?)


 そんなことを真剣に悩むレイトである。

 そうそう、魔法といえば魔法の名称が変わっていた。

 「ちゆのまほう」は「ライトヒーリング」に。

 「げどくのまほう」は「トリートメントディシーズ」になっていたので一番最初は戸惑うことになった。

 Diseaseディシーズは「病気」「不健全な状態」を意味する英語なので、どうやら毒にも麻痺にも効くようだ。

 もっとも、マミーの麻痺攻撃もスパイダーポイズンの麻痺攻撃も毒攻撃の一種で結果が麻痺なのだと言えなくもないので、どちらにも効くことはおかしなことじゃない。

 ライアンは、他にも聖職者らしく、より回復力の高い「キュアライト」攻撃が当たりやすく、防御が成功しやすくなる神の祝福「ブレッシング」使いどころが判らない「ホーリーライト」と「クリエイトホーリーウォーター」に「ディティクトイービル」と唯一といえる攻撃魔法の「パラライズ」を持っていた。

 第四階層のモンスターはそれまでのモンスターより強い分、入る経験値も大きいようでみんなサクサクとレベルが上がっていく。

 まぁ、自分のレベルを数えているレイト以外のレベルが現在どれくらいなのかは判らないのだけれども。

 ダンジョンを進んでいくと、やがてなにやら立派な扉の前にたどり着いた。

 すると、


「ここはマミーの中でも位の高いマミーが安置されている部屋だ。そこらのマミーより強いから十分注意しなきゃいけないぞ」


 と、突然視界の右側にアニメのキャラクター然としたライアンが現れて忠告してくれる。

 その姿は256色表示の敵キャラだった頃の雰囲気は十分残しつつも、ちょっといかついフランシスコザビエルって感じのおっさんだ。


(あ、イベントモード?)


 と、レイトがぼんやり思っていると


「レイトさんたちなら大丈夫ですよ」


 と、ライアンと入れ替わるようにクリスティーンが現れる。

 32×32ドットだった塔の中以来の登場だ。

 白を基調に淡い水色が施された僧衣風のドレス姿で、華奢で細身。

 色白で卵形の輪郭にたれ気味の大きな目と通った鼻筋、ポテっとした上品な唇が配置よく愛らしい。

 キラキラと輝くようなストレートの銀髪を腰まで届きそうな長さまで伸ばしている。

 さすがお姫様だ。


「ちょうどいいじゃないか、試したいことがあったんだ。腕がなるぜ」


 ヴァネッサはダンジョンで生まれ育っているはずなのになぜか色浅黒く、精悍な印象を際立たせるキリッとした目は爛々と輝き、シャープな輪郭と相まって一見「カッコイイ」が唇が可憐な印象を留める美女だった。

 最初に登場したときのグラフィックでも強調されていたメリハリボディーはおっぱいの形を強調するような胸当て以外に特に鎧をつけておらず、筋肉質で8パックの腹筋がバッキバキなのに女性特有のボディラインがセクシーという贅沢仕様のわがままボディだ。

 両手持ちらしい1m級の大剣をにこやかな笑顔で肩に担ぐ姿がすごく様になっている。

 なってはいるのだが……。


(これはもったいないけど、鎧を着せなきゃダメだろ)


 レイトに比べてダメージが大きい理由にようやく思い至った彼は、ヴァネッサに手持ちの鎧を着せようとしたのだけれど、


「胸が入んないんだよねー」


 と、あっけらかんと答える。


(おおっと……)


 清楚系お姫様のクリスティーンといいこのビジュアルが常に視界に入っていたらそりゃあ冒険どころではないかもしれないと、今更ながら3Dダンジョンゲーム風の視覚情報に感謝したレイトであった。

 対マミー戦はまずレイトのファイヤーボーから始まった。燃えるマミーは毎ターン火によるダメージがある。これはマミーにだけ与えられる継続ダメージになっている。

 さすがに特別なマミーだけあって単体でもすば抜けたHPを持っている。

 やがてヴァネッサの行動選択に新しい選択肢が出るようになった。

 「攻撃」

  「武器」

   「通常攻撃」

   「バーサークラッシュ」


(これか、試したいことって)


 レイトは「試させてあげないと悪いよな?」と思い、バーサークラッシュを選択した。

 ヴァネッサのターンでカットイン(残念ながらアニメーションはしなかった)が入り、5連撃が繰り出された。


(「怒り狂ったバーサーク突撃ラッシュ」か。すげーな)


 すごくはあったけれど、この必殺技を使った後は2ターン行動できなくなるようだ。


(使い所は考えないとな)


 「本当なら俺が考えなきゃ行けないことじゃないんだけれど」と、冷静にツッコミを入れてみるレイトであった。

 レイトのファイヤーボールとヴァネッサのバーサークラッシュという強力なコンボと、相手が単体だったことが功を奏して中ボスマミーは倒すことができた。

 マミーの後には宝箱。

 それを開けるとザクザクのお宝が出てきた。


 パーディーの現在の装備は

●レイト

 鋭利な鋼鉄の剣

 鋼鉄の鎧

 鋼鉄の盾+1

 鋼鉄の兜

 大きな背負いカバン

 力の石

 知恵の石

 守りの石

 加護の十字架

 HPポーション8

 MPポーション5

 解毒薬8

 おにぎり4

 金貨12,958GP

 宝石7

 鋭利な鉄の剣

●クリスティーン

 木製ワンド

 王族のドレス

 神のシンボル

 豪華なポーチ

 HP回復薬7

 HPポーション3

 MP回復薬5

 MPポーション9

●ヴァネッサ

 アマゾネスの大剣+2

 アマゾネスの胸当て+1

 質素なかつぎ袋

 HPポーション6

 MPポーション1

●ライアン

 鉄のメイス

 頑丈な鎧

 神のシンボル

 背負い袋

 HPポーション1

 MPポーション7

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