140字小説 (精神障害/発達障害)

-うつ病の世界-

 まるで、 見えない手で背中を押さえつけられているように。 分銅がズシリと乗っかるように。 鉄の靴を履いているように。 死神に生気を吸われたかのように。

  世界は灰色だ。色も音も匂いも鈍く感じた。


-うつ病の世界2-

 この世の全てが私を拒絶している。

 人が、事象が、私の存在を憎む。どうして私ばっかりこんな目にあうの?

 他人は言う。目を凝らせば、耳を澄ませば、他の道もあるのに。

 まるで、黒い箱の中にいるように、彼らには届かない。

 彼らはその箱を開けてくれる人を待っている。


-うつ病の世界3-

 上司からはミスが多いと罵られ、妻からはもっと稼いでこいと叱咤され、覇気のない私を見て子ども達からは無視される。友人に相談しても甘えるなと言われ、同僚は自分のことで精一杯。

 私は生きていていいのだろうか。

 私は何者だ。頑張れという言葉はもうたくさんだ。


-境界性パーソナリティ障害の世界-

 僕たちが「待つ」ことができないのは、見捨てられてしまうのではないかという不安があるからだ。そんな自分が嫌になる。

 空虚感が怒りがぼくの心を狂わせる。

 誰かこんな自分を愛してくれる人はいないだろうか。

 ああ、普通の「心」がほしい。


-自閉症の世界-

 目の前の景色が眩しくて、喧騒に耐えられなくて、僕は目と耳を塞ぐ。そうすると、何してんだと怒られる。

 どうしたらいいんだ。これだけ強い光と音の中どうしてみんなは平気なんだ。

 僕の頭は真っ白になった。気づいたら涙を流していた。どうしてだかは分からない。


-AD/HDの世界-

 僕たちはひたすら動き続ける。それはドライブされるからだ。まるで、宿命かのように。

 なぜじっとしていられないと疑問に思うかもしれない。逆に聞こう、なぜじっとしていられるんだ?

 今日もふらふらと動き出す。そして、変わり者の烙印を押される。





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140字小説集 成上悠也 @narukamiyuya930

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