第5話

 もう1冊のファイルには捜査のまとめが書かれていた。

 書かれていたことをまとめると、黄野町は廃墟と化し住んでる人は存在しないようだ。捜査中、何人かの刑事に異変があったがその後は何も無く普通であった。

 1番最新のものには、捜査中に真新しい足跡を見つけたことと人影を目撃したといった内容が書かれていた。

 日時を見てみると3年前の調査レポートであることがわかる。


「……こんな所に人がいるのか。遊び半分で訪れた若者じゃないのか?」


「それなら多分その場で注意しますよ。姿を確認できなかったとも書いてますし恐らく逃げていたのではないでしょうか」


「そうだな。こればかりは行ってみないと分からないな。まずは確認が必要だな」


 俺はそう言うと先ほど記録した電話番号をケータイに打ち込み、雷道裕大の家に電話をかけてみることにする。

 電話をかけてみると雷道裕大本人と思われる人物が電話に出てきた。


「はい、雷道です」


「あ、雷道裕大さんの自宅のお電話でしょうか?」


「はいそうです。そちらさんは?」


「刑事課の山川と申します」


「……ほう。警察の方が何用で?」


 雷道は少し驚いたのか少し間をおいて、と不思議そうに質問してくる。


「20年前に起きた黄野町での変死事件についてなのですが、雷道さんは唯一の生存者とのことでお話を伺いたいのですが、自宅に伺ってもよろしいでしょうか?」


 ちょっと間を置き、声のトーンを低くし、「……わかりました。どうぞ来てください」と答える。


 その声には迷いがあるように感じるが、会ってみなくては何もわからない。

 もしかしたら何かを重要なことを知っているかもしれない。


「はい、ありがとうございます。それでは自宅の住所を伺ってもよろしいでしょうか?」


 雷道が自宅の住所の住所を教えたのち、

「わかりました。この後向かわせてもらいます」と雷道に伝える。


「はい、お待ちしております」


 雷道がそう言ったところで電話を切る。


「これから雷道の自宅に向かうのですね」


 こちらの会話を聞いていた冬月が質問してくる。


「ああ、すぐに向かう。準備はできてるか?」


「さっき出たばかりですしね。さっそく向かいましょう」


「そうだな。それと冬月、お前は隣で行方不明事件の資料を読んでおいてくれ」


「分かりました」


 そう言って、さっきと同じ用意で車に向かい荷物を載せ、冬月とともに雷道の家へと走らせる。

 そうして、30分ほど車を走らせたところで雷道家に到着する。

 家の脇に車を駐車させ、インターホンを鳴らす。

 すると中から雷道の奥さんと思わしき人物が出てき、「はい、雷道です」と応える。


「先ほど連絡させていただいた刑事課の山川です」


「わざわざすみません。どうぞおあがりください」


 家の中へと招かれ、玄関には雷道の奥さんが待っていた。

 そしてそのまま客間へと案内され、椅子に腰かける。


「では、主人を呼んできますので少し待ってくださいね」


 そう言って一礼してくれ、奥さんは客間から出ていく。


「……電話の声からは迷いを感じたが、何かあるのだろうか」


「先輩、大丈夫ですか? 何か不安でもあるんですか?」


 俺の顔を覗き込むように冬月が見る。


「あぁ、迷いがあるということは話しにくいことなのかもしれないからな。その内容がどういったものなのか少し不安があって」


「そうですか……でも話を聞くまで内容はわかりません。とにかく話を聞かないとです」


 冬月の言う通りだ。

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