第4話

 しばらく会話をしながら走らせていると自分たちの警察署に着く。

 すぐさま車から降りると急ぎ足で署内へと向かっていった。


「先輩、もし今回の行方不明事件と変死事件が関係なかったら振り出しに戻るうえにこれからの行動が無駄になってしまいますよ? それに二十年も前の事件ですし資料も見つかるか怪しくないですか?」


「そうだろうか? 二十年前の事件とは言え未解決事件なんだ。何かしらかの資料はあるはずだ。とりあえず資料室に行くぞ」


 そう言って資料室を目指して廊下を進んでいく。それを追うように冬月もついてくる。

 外とは違い、署内は冷房が効いており快適だ。

 そして目的の資料室へと向かっている途中、歩きながら冬月が質問を投げかけてくる。


「どんな資料を探すつもりですか?」


「生存者の確認だな。いるなら直接話を聞きたい。恐らく雷道が生存者だろうが確証がないからな」


「でもさっきメモに電話番号が書かれてましたよね? その時に直接確認してもよかったんじゃないですか?」


「そうかもしれないが本当に関わっているかどうかはいまいちわからない。確実に真相を解明するために資料室で確認を取るんだ。それに津村が雷道と接触した可能性がある以上変死事件を追っている可能性は高い。ならこっちを調べることが大切だ」


 そうこう話しながら歩いていると署内にある資料室に着き、司書をしている同僚の桂木かつらぎに声をかける。


「よぉ桂木、ちょっと探したいものがあるんだがいいか?」


 パソコン作業をしている桂木は手を止め、こちらを見ると不思議そうな顔で返事をした。


「あら、山川君。なにを探してるの?」


「黄野町変死事件についての資料はないか? それと行方不明事件の方の資料もいくつか見せてもらいたい」


「あら、なんでまた変死事件なんかを?」


「ちょっと訳があってな。頼むよ」


「まぁいいけど、ちょっと待っててね」


 少しばかり疑問には思っている様子だが、そういうと桂木は本棚のあるほうへ資料を探しに行った。


「桂木さん、今日もきれいだなぁ」


「ああ、確かあいつ女性からの人気も男からの人気もすごいよな」


「うんうん、そうなんですよ。先輩はああいう女性に興味とかないんですか?」


「ええっと、興味がないわけではないがちょっとな……」


 こういう問いにはいつも困るんだよなぁ……

 このような会話はあまり得意でないのだ。

 目線を逸らし、手をズボンのポケットに突っ込む。


「…あまり女性と話すのは得意じゃないんだよ」


 取り調べなどで女性を相手するときというのはとても苦手なのだ。

 何か思うところがあったのか、いぶかし気な表情で冬月が迫ってきた。


「じゃあ私はどうなるんですか!」


「い、いや。そりゃあ最初は色々と困るところはあったがずっと一緒に仕事をしてれば慣れもするだろ」


 驚きと戸惑いが混ざりながら弁解する。


「そ、そうかもしれないですけど!」


「あなたたちもう少し静かにできないのかしら?」


 気が付くと桂木が戻ってきていたようで、呆れた表情を浮かべ俺たちのことを見ていた。


「あ、ああ悪いな。で、資料はあったか?」


「ええ、ただ変死事件の方はあまり資料が少なくてこれしかないわ」


 そう言う桂木の手には2冊のファイルがあった。

 それとは別のファイルもいくつか持っており、そっちが行方不明事件の方であることが分かる。

 桂木から資料を受け取ると礼を言った。


「ありがとう。助かるよ」


「ちゃんとあとで返しに来るのよ。そこの棚に置いといてくれたらいいから」


 そう告げて自身の作業へと戻っていった。

 俺たちも自分たちのデスクへと戻り、さっき借りた資料を読んでいく。

 どうやら変死事件の生存者は二人だけのようで、一人はさっき津村の家で見つけたメモに書かれていた人物である雷道裕大だ。

 黄野町の交番に勤務していた警官だそうだが現在は消息不明とのこと。

 もう一人の人物が根野海悟ねのうみ さとるという人物ので、黄野町にあった高校に通う高校二年生らしい。

 しかし、この事件の後に自殺しているのが発見されている。


「思えばどういうことだ。雷道は消息不明だったのに津村はよくアポを取ることができたな」


「ですね、ジャーナリストですし何らかのルートでもあったのですかね」


「ふむ、そういったルートは全く分からないな。ただやはりこうなってくると雷道に話を聞きに行かないとだな。確実に雷道は変死事件にかかわっていることが分かったし」


「そうですね、根野海悟はすでに亡くなっていますし、それ以外ないですね」


「他の資料には何が書かれているか……」

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