ログインボーナス44日目 ルシヨン

 目が覚めたら目の前に、見慣れない天井があった。

 三度目でも驚きはする。


「あ、起きましたね。おはようございます」

「おはようございます」


 ピンク色のパジャマを着こなした配達員さんが声をかけてくる。

 眼福だ。

 もういいよ、これで。ログインボーナス。


「ここどこです?」

「プロバンスのホテルです」

「プロバンスって言ったらフランスの?」

「ええ」


 スマホで時刻を確認すると0時だった。日本時間では朝の7時だ。


「これに着替えてください」


 配達員さんにそう言われて渡されたのは濃紺のスーツだった。



 真夜中のプロバンスの街並みはオレンジやイエローの街灯が並び、暗くはなく歩きやすかった。

 スーツを着用した俺の隣を、濃紺のドレスに身を包んだ配達員さんが歩く。

 いつもの黒いスーツかと思ったが、ドレスとは珍しく、いつもより美しさが増していた。

 街灯が配達員さんの白い髪をマリーゴールドの様に染め上げる。

 紺のドレスがさらに髪を引き立てる。


 ドルフィン広場の近くの酒場は午前1時を回ろうとしているのに、店は閉じておらず客も大勢いた。

 ガレットを持ち帰りとして買い、ドルフィン広場の噴水脇で配達員さんと並んで食べた。


 この時間帯では特にすることがなく、ホテルに戻って二度寝させてもらった。


 フランスの時刻で7時に配達員さんに起こされた。

 ホテルをチェックアウトし目的地に向かう。


 その前に配達員さんと朝市を巡った。もちろんドレスで。

 配達員さんはスパイスとドライラベンダーを大量に購入していたので、俺もドライラベンダーを一袋。

 興味が湧いただけ。


 その後、配達員さんが運転する黒い高級車に乗り、小さな村へと言った。


 村の境界線を越えた時「今日のログインボーナスはルシヨンです」と隣で告げられた。


 駐車場に車を止め歩く。


「何か有名どころとかあるんですか?」

「そうですね、サンミシェル教会から展望する景色は有名だと思います」


 俺のお腹がなったので昼食へ。

 パン屋とカフェが隣接していて迷った挙句、両方選択した。

 パン屋ではサンドイッチを、カフェではコーヒーとオムレツを二人前ずつ購入してカフェのテーブル席で食べた。

 テーブル席からは平野が見渡せて、雲一つない青空で朗らかだった。


 ギャラリーで絵を見たりした、この地方の人たちは余り濃く絵の具を使わないみたいだ。

 それとラベンダーの風景が多かった。


 特に見たい所が無かったので、配達員さんと共にプロバンスに戻った。

 二度目のプロバンスでは、俺のログインボーナスが済んでいることもあって、配達員さんの趣味を優先した。

 その結果、荷物持ちとして相応の量のロゼワインを運ばされていた。


 12時を回ったころ、いつものプライベートジェットに乗り、プロバンスを経った。

 恒例のナポリタンを食べ、配達員さんと遊んだ後、眠りについた。


「起きたら、あなたの部屋なので安心を」

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