ログインボーナス16日目 北斗七星

 今朝、配達員さんにお弁当箱を返そうと時間ぎりぎりまで粘ったが、インターフォンが鳴ることはなかった。


 沈んだ気持ちで1日を過ごした。

 もうログインボーナスが身に沁みついている。活力となっている。


 どんよりとした雰囲気を纏いながら帰路に着く。


 最寄りの駅から歩いていると、後方からクラクションが鳴った。

 見覚えがある黒い高級車だ。


「お疲れ様です。助手席に乗ってください」


 サイドガラスから顔を出した配達員さんに、そう声をかけられ助手席に乗り込む。


 県道から国道、国道から高速道路に入り山の方へと車が進んで行く。


 パーキングエリアで少し休憩したのだが、他の客が何かに驚いていた。

 何に驚いていたのだろうか。

 それよりも配達員さんが買ってたメロンパンを見て、また彼女を愛おしく感じる。


「メロンパン好きなんですか?」

「いいえ。寄ったパーキングでは名産物を買うようにしてるんです」


 その言葉の後に続けて、「ひと口食べますか? 美味しいですよ」と食べかけのメロンパンを差し出してきた。

 少し顔が熱くなった。


 辿り着いたのは県境の山の頂上。

 空には満点の星空が輝いている。

 車内で彼女はこう言った。


「今日のログインボーナスは北斗七星です。どれか分かります」


 星の位置を教えようと近づいた彼女にドギマギする。


 車外に降りて星を見上げる。

 頬をつんつんと突かれ振り向くと彼女が星を教えてくる。

 星が好きなのだろうか?


 配達員さんの白い髪が、星の僅かな光を吸収して煌めく。

 眺めているといつか彼女とウミホタルを見に行きたいと思った。

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