第2話信念とLove Out

「お洒落じゃなきゃスノーボーダーじゃねーよ!」


 怒鳴った佑月にとってスノーボードは大切なお洒落な仕事だ。そんな佑月にも過去には色々と叩かれた事件があった。

 それは、彼がまだ10代の頃の話だ。幼少の頃からどの大会に於いても優勝を勝ち取ってきた佑月。だから注目度は人一倍。


 そんな中、当たり前の如く選べれた日本代表での世界大会へ向けて、遠征するための空港で、それは起きた。報道陣に囲まれた佑月。普段と同じ格好で現れた佑月に対し、報道陣が佑月を攻めるかのように、質問を浴びせた。


「何故、あなたは日本代表という身でありながら、みんなと同じスーツを着る事はしないのですか?日本代表の遠征でしょう?日本人として恥ずかしく無いんですか?」

 容赦の無い質問。それに屈する事なく答える佑月。


「えっ!?何が悪いの?俺のスタイルなんで……」と一蹴。


 ざわつく報道陣を尻目に、搭乗ゲートから飛行機に乗って行ってしまった。その後、大会が始まるとワイドショーで取り上げられた。


「あの態度は日本人としてどうだのこうだの」


 何様気取りのキャスター達が、代表選手の威厳とは何かとを語っていた。だが見事大会優勝で、それは一蹴されたかに見えた。

 だが、遠征先から帰ってきた記者会見でも普段着の佑月の対応と喋り口に、また報道陣が噛み付いた。


「優勝すれば何でもいいんですか?あなたには、代表選手という自覚はないのですか?」

「……」


 黙りながら、舌打ちをしかけた際、隣の先輩の助けにより、その場は謝るのかに見えた。だが、佑月は、その問いただした記者に真っ向から勝負を挑んだ。


「じゃあ、あんた。日本中の人々を感動させられる記事かけるの?そんな相手の心情を逆なでする様な事ばかり言ってるのに?俺には俺のスタイル、あんたにはあんたのスタイルがあるからいいんじゃないの?」


 奇しくも前回質問を投げかけた同じ記者。それに対して見事に言いのけた。その場で騒動に成りそうな勢いだったが、テレビを見ていた私は、まだ若いのに自分の信念を曲げないのって格好いいと思ったものだ。


 あれから5年が経ち、今は私とほぼ暮らしている。というか、仕事が終わると転がり込む。そして日本の冬の間は、私と共に過ごす。だがそれもたった3ヶ月の期間だけ。来年の2月になれば、また海外へと旅立つ。

 だから、今は佑月の腕の中でいたいのに、こいつは一人お気に入りの音楽に浸る。悔しいから、上に乗っかってやる。すると佑月が私に言う。


「youtube見てよ。今回の奴は結構すごかったんだから……」

「わかってる!でもその前に、この放ったらかしの時間をどう埋めてくるの?私、寂しかったんだよ?」

「……俺も……」

「じゃあ、音楽なんて聞かないでさあ?」

「わかってるけど、照れるんだよ……。久々だと……」


 そう言うと優しくキスを交わす。そしてまた深い愛情の波が私に訪れる。佑月からいっぱいのLove Out。愛撫をもらう。その愛撫に酔っていると口元で優しい佑月の声。


「愛してる」


 その言葉に頷く私がいる。その行為は続けられた……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Love Out of Lust【愛してるがほしい】 北条むつき @seiji_mutsuki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ