独白5

 ある日の助言と会話に困ってしまった私は、ただ彼女と話したい一心で、コッペパンを見つめる彼女の後ろ姿に、心にもない無意識を、つい口走ってしまいました。


 そして、彼女を我がものとする、あの禁句を覚えてしまったのです。


「食べ終えるまで、席から立っては行けません」


 そう唱えた後の、驚いた顔で振り向いた彼女の乱れた緑の黒髪。


 その隙間を長い睫毛が掻き分け、儚げに晒された、涙で潤い、こぼれぬように、震えぬようにこちらに向けられる懇願の眼差し。


 堪えきれずに漏れ出る、幼い吐息の香り。


 その全てを、永遠に手放したくないと思ってしまったのです。

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