26 夢魔娘


 僕は夜9時に必ず眠る。

 彼女と出来るだけ長い時間共にいたいからだ。


 ちょっとした浮遊感。

 その後に僕はデートの待ち合わせ場所に立っている。

 街の中だったり森の中だったりとまちまち。

 今日はどうやら街の中、ハチ公の前なのに目の前は姫路城。

 ハチ公の背後にはでかい……ミッドランドスクエア?


 エスコートは彼女任せ。

 服装は寝るときに来ていた物。

 だから僕は寝るとき少しだけ着飾る。

 起きたとき皺だらけになるけど、仕方ないことだ。


 少しその場で待っていると、彼女がやってくる。


「ごめん、待った?」


 彼女がいないと僕はこの場に立っていない、はずなのに彼女は遅れて「待った?」と聞く。

 前聞いたら気分出しだそうだ。

「いいや、僕もいま来たところ」


 だから僕も雰囲気を出すために毎回このフレーズを考える。

 今日はスタンダードに行ってみた。


 おきまりのプロトコルを通じて僕たちはデートする。


 彼女は夢魔だ。

 本人が名乗る所によると、「夢渡り」という種族らしい。

 人間に混じって生活し、しかし他人の夢に入り込んで精神エネルギーを吸って生きる人々。

 ほんの少し、それだけで充分のようだ。

 吸い過ぎて殺してしまった夢魔はいないと彼女に聞いた。


 彼女とのデートはとてもエキサイティング。

 夢の世界はどんな映画にも負けない迫力を持っている。

 リアリティは保証しないが。


「今日は夢の中で楽しもう?」


 毎日だけど、飽きない夢の中。

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