《ボイナとの修行:3》

周囲の木が燃えて、炎がどんどん大きくなり森に広がっていく。俺は燃え上がる炎から逃げられそうになかった。


「や、ヤバイ。"氷結フリージング"」


逃げられない俺は水属性氷魔法の中級攻撃魔法を使って周囲の木を凍らせていく。


かなりの範囲をボイナから教わった"氷結フリージング"で次々と凍らせて自分が焼け死なないようにする。


周りでは炎に焼かれて魔物の雄叫びが聞こえてくる。やがて、周囲の炎が小さくなっていく。


炎が消え、残されたのは燃え残った木に魔物の死体だけ。だが、遠くの方で何かが動いた。


「何か生きてるのか?」


俺は気になり近づいて行った。すると、大きなヘビが死にかけている。ヘビは近づいてくる俺に気が付くと、いきなり襲いかかった来た。


口を大きく開き、噛み付こうとしてくるヘビに驚き、咄嗟に剣を突き出すと偶然だが剣が口から頭に突き抜ける。死にかけていたヘビは、それだけで死んでくれた。でも、


「あのヘビ生きていたってことは強いんだよな?」


あの森にあった死体の中には砂漠で見かけたランクCの魔物の死体もあった。つまり、あのヘビはそれより強いって事だ。


もし、死にかけてなければ危なかったかもしれない。


焼け落ちた森を抜け、何処か安全な場所を探して歩いていると森から離れた山の方に洞窟を見つけた。山の方に行き洞窟に入ると中には何もいなさそうだった。


洞窟の周りにも魔物はいなかった。安全な場所を見つけられたと思い洞窟の奥へと進むと途中で骨がいくつも落ちている。俺が骨を拾い見ていると、


「シャアァァァァ!」


奥から森で見たヘビの魔物が現れた。森で見たヘビより遥かに大きいサイズだ。まだ距離があった、そのヘビに即座にを放ち入り口の方に下がる。


俺が放った土属性土魔法の中級攻撃魔法。"岩石落としロックドロップ"がヘビの頭上に現れ落ちるが、ヘビが岩石を避け向かってくる。


岩石を避けたヘビが口を開き何か液体を吐き出してくる。俺が避けたことで液体が地面にあたる。すると、地面が溶けた。


「酸かよ!?」


ボイナによると魔物は魔物特有の魔法を使うらしい。ボイナの場合はブレスって魔法を使うとの話だ。なら、何で人間が使う魔法を知ってるのか聞くと、


「大昔は我に挑んでくる愚か者もおったのじゃ。そやつらが使っていたのを覚えたのじゃ。」


そう言っていた。


酸の攻撃を避け、"火炎弾フレイムボム"を使うと今度は当たった。だが、このヘビは一瞬だけ動きが止まっただけで中級攻撃魔法がほとんど効いてない。明らかに格上の魔物だった。


「あの時は、弱ってたから倒せただけかよ。」


攻撃魔法が効かない以上、逃げるしかない。中級攻撃魔法でも、一瞬だけなら動きが止まる。なら、少しは効くってことだ。


だったら、"雷撃サンダーボルト"で痺れさせてやればいい。効かなくても雷自体が相手を痺れさせる風属性雷魔法の中級攻撃魔法。これなら、逃げれるだけの隙を見せる筈だ。後は全力で逃げればいい。


結果、作戦は成功した。初めての敵意ある格上との戦闘。生き残れたのはただ運が良かっただけなのかもしれない。けど、この一戦が確実に俺を強くしてくれた。


その1ヶ月後、俺は生き延びた。言われた通り鑑定は使わなかった。その為、相手の情報は一切分からなかったが気配からある程度の強さがわかるようになった。


別の場所で見つけた洞窟を拠点に弱い魔物を食べ、強い相手には一切近づかず、もし見つかっても足止めして生き延びた。


「ふむ。よく生き延びたのじゃ。それじゃあ、残りの上級と超級を説明してやるのじゃ。」


気配探知に上空に強い気配があり、上を見たらボイナがいた。


現れたボイナは俺を背中に乗せ、島の中にある湖に移動した。


「さて、これから攻撃魔法の上級と超級を説明しながらお主に見せてやる。」


そう言って湖に次々と魔法を放つボイナ。確かに凄かった。上級攻撃魔法により死んだ魔物がたくさん浮かんでいる。でも、超級攻撃魔法は凄いなんてものじゃなかった。正直、使いたくない。


ボイナが知っていた、火属性火魔法の超級攻撃魔法。"灼熱地獄インフェルノ"。


ボイナが放った"灼熱地獄インフェルノ"が一瞬で湖を干上がらせ、湖の底はまるで噴き出るマグマのように赤く煮えたぎっている。


「よいか?"灼熱地獄インフェルノ"はお主のレベルが80を越えるまで使うな。耐性を持っておろうが今のお主では自分の魔法で死んでしまう。」


見せてくれたボイナがそう言ってくる。俺はその言葉を深く胸に刻んだ。


「これで攻撃魔法は全部教えた。今のお主なら上級までは問題ないじゃろう。いつか超級も使いこなせる様にもなるはすじゃ。」


攻撃魔法はこれで終わりらしい。そう言って姿を人に変えるボイナ。


「さて、残りの2ヶ月は特殊属性と無属性を教えるのじゃ。それと剣も鍛えてやるのじゃ」


残り2ヶ月で修行も終わりか。


「と言っても残りの属性の魔法はお主ならば、ほとんど教えることはないのじゃがな。光属性も闇属性も我が知ってるのは、回復魔法と支援魔法じゃ。なら、使う為に効果について詳しく知る必要のないお主なら、一度使えばどんな魔法かは理解出来るじゃろ。問題は無属性じゃ。」


まあ確かに教わることはなさそうだ。普通なら、どんな魔法か、どんな効果があるのかを知らないと使えないけど俺の場合は逆だ。使ってみれば全てわかる。攻撃魔法のように威力が必要な訳でもないみたいだし。


「無属性も初級魔法なら問題なく使えるじゃろう。じゃが、上級魔法の飛行魔法と転移魔法。これが難しい。」


転移魔法はなんとなく難しそうだけど飛行魔法も?


「転移魔法はわかるけど飛行魔法も難しいのか?呪文さえ唱えれば飛べそうだけど?」


俺がそう聞くと、


「飛ぶだけならお主なら簡単じゃ。問題はそこじゃない!一度飛んでみよ。」


そう返すボイナ。言われた通り飛行魔法。"飛行フライ"を使ってみる。すると、


「う、うわー。」


飛ぶのは成功した。飛ぶのは!俺は飛行魔法を解除する。俺はから落下した


「どうじゃ?難しいじゃろう。普通、人間は飛べるように生まれておらん。我なら元々飛べるから"飛行フライ"を使ったとしても問題なく飛べる。じゃが、人間の場合は体制を保つのが難しいのじゃ。」


そう。ただ使っても体制が保てなかった。さっき使った際は体制を保てず逆さまになってしまった。


「飛行魔法で飛ぶためには体制を保てる様になるまで練習するしかない。転移魔法も同じじゃ。転移魔法はその名の通り、場所を移動する魔法じゃ。これは知ってる場所ならどんなに離れていても空間を越え移動できる。じゃが、場所を正確にイメージする必要がある。」


知ってる場所なら?じゃあ地球にも?俺が確認しようとすると表情に期待が出ていたのか、


「ただし、転移魔法移動できるのはこの世界の中だけじゃ。」


そう言われてしまった。何か今の言い方違和感があったな。


「転移魔法でってことは、もしかして別の魔法なら地球に帰れるのか?」


俺がそう聞くとボイナは、


「帰れるかは分からん。じゃが、我も聞いた事があるだけじゃが、可能性のある魔法を知っておる。じゃが、この魔法は我には、いや。アルティミアに住む者には使えん。地球から来たお主なら使えるかもしれんが。」


そう言われた。俺なら可能性があるのか?でも、聞いた魔法にそれっぽいのはない。


「なんて魔法なんだ?教えてくれ。」


地球に帰れるなら、姫華姉さんを見つけて戻れば精神を元に戻せるかも。この世界から戻せなくても向こうなら可能性はあるかもしれない。試してみる価値はある。そう考えていると、


「駄目じゃ。今は教えられん。期待させといて悪いが教えるのは修行の最後にさせてもらう。今は"飛行フライ"と"空間転移テレポート"に集中して貰う。」


そう言われてしまう。ボイナが何を考えているかは知らないが、その考えを覆す事はなさそうだ。


そして、今日で修行が終わる。"飛行フライ"も"空間転移テレポート"も完璧に使える様になった。だから、


「さあ、地球に戻れる可能性がある魔法を教えてくれ。」


そう言ってボイナに詰め寄る。


「分かったのじゃ。じゃが、言ったように我には使えん。だからお主に対して詳しく説明も出来ん。それでもよいか?」


「ああ。教えてくれ。」


「わかった。その魔法は"次元転移ワープ"。他の次元にある世界に移動する無属性の次元移動魔法。移動する世界の事を知らないと使えない超級魔法じゃ。」


最後に次元移動魔法を教えてもらい修行が終わった。

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