撫でる声

音澤 煙管

騒がしい月灯り




肌寒く感じる風の音。


肘を隠すこの頃は、

オリオン座が大きく現れる。


忙しない雲の渦が暴れ去り、

澄んだ星空に染まる夜。


渦の残像が隙間風に乗り、

顔を急いで撫でてゆく。


気疲れしたあとの安堵感に、

冷えないようにと頭が働く。


心のノートを開けてみろと、

喋り出した月灯り。


あの子が昔から好きな人、

今は誰も好きじゃない風と。


眠れなかった真夜中の、

問いに困り顔の母の風に。


何も告げずに黙って出て行く、

真夜中に父が立ち去った車の風が。


好きとも言えずに転校した、

照れたあの子の視線が届いた風を。


自分の弱さを隠すため、

傷つけた友人たちの風も吹く……


今の夜空は、

ココもお前も騒がしいと言っている。



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撫でる声 音澤 煙管 @vrymtl

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