第2話 


「ねえ貴方、私とダンジョン攻略しない?」

「え……?」


 あ、戸惑ってるわね……。


「え〜と……」

「もしかしてダメだったかしら?」

「ダメというか、俺冒険者じゃないんだ。武器も持ってないし」

「あ、そうなの?」


 言われてみれば確かに。

 そもそもこんな人当たりの良さそうな人が、魔物と戦えるわけもないか。


「ああ、というわけだから、悪いけど他を当たってくれ」


 と、彼は踵を返して道を歩いていく。

 コツンコツン……。


「ねえ、ちょっと待って」


 その聞き覚えのある足音のリズムに、私は思わず彼を引き止めていた。


「え〜と、まだなにか?」

「あ、えと……」


 どうしよう……。なんて言えばいいのかしら?

 そもそも彼なの?

 いや、まずは確かめないと。


「……ねえ貴方、この町の出身……じゃないわよね? それなのに武装もしないでどうやってこの町に来たの? 途中には魔物も出るでしょ?」

「ああ、行商人の馬車に乗せてもらったよ。護衛の冒険者たちもいた。ほら、この町最近になってダンジョンが現れただろ?」

「……あぁ、そっか、そうよね。あはは……ごめんなさい、変なこと聞いて……」

「別にいいよ」


 でも絶対変な人だと思われたわよね?

 あー、私のバカ! ちょっと考えれば商隊の馬車があるのわかるでしょ!

 もう!


「じゃあ、俺行くから」

「あ……」


 行っちゃう。

 そんなことを思った私は、思わず余計なことを口走っていた。


「あ、あの! 名前、名前教えて!」


 何聞いてるんだろう私……。

 そう思っていたのだが、彼は一泊置いて……


「セーヤ」


 と、そう答えた。


「セーヤね。私はフレア。見ての通り冒険者なの。ダンジョンでエリクサーを探してるわ!」

「………………」


 これを言うと、皆同じ反応するのよね。

 エリクサーなんか絶対に見つかりっこない! バカじゃないのか。

 セーヤもきっと、同じ反応をするわよね……


「見つかるさ」

「え?」

「エリクサー。必ず見つかる。と、俺は思うよ」

「あ、ありがと……」


 なんで彼は、私以上に自信を持ってそんなことを言えるのだろうか?

 不思議な人だ。それと、ちょっとだけ自信がついたかも。


「冒険者に興味が湧いたらいつでも言って。その時はちょっとくらいの支援ならするわよ!」

「ふふ、そうだな。興味が湧いたらな」


 ドキンッ……。

 な、なに笑顔にドキドキしてるのよっ! はふぅー……落ち着きなさい私ぃ!


「そっちが自己紹介したのに俺がしないのは悪いな。俺、道具職人やってる。この町でポーションとか便利な道具とか売るつもりだから、よろしくな」


 セーヤは指で丸を作っていた。

 お金を落としていけってことね……。


「わかったわ。あと、今日のお詫びに今度何か奢らせてね」

「ああ、楽しみにしておくよ」


 そう言い残し、セーヤは去っていく。

 最初の仲間……にはならなかったけど、頼もしい人ができた。

 道具屋……いつオープンするのかな?

 ちょっと楽しみにしつつ、私は仲間探しに励むのだった。

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ダンジョンマスターは目立たない きりうえほう @cfgo6467

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