よもやま話(4):面白さは正義。すべてに優先される

 今回からこのよもやま話シリーズの核心に入ります。私が現段階で勉強している最前線です。


 いきなり身もふたもない話ですが、面白さは全ての小説技術を凌駕します。


 面白さには、私がこのエッセイで垂れ流してきた講釈なんか足元にも及びません。出版社の偉い人もかないません。手揉みしながら近寄ってきます。


 こんな経験はありませんか?


「本を読んでいるとあっという間に一気読みしてしまった」


 つまり、時間を忘れるほど面白かったということですね。でも、面白いにはもっと上があります。


 それは、


「残りのページ数が減っていくのが、残りの紙束の厚みが薄くなっていくのが、惜しくてたまらない。この時間よもっと続いてくれ」


 という状態になること。


 ここまで面白ければ行間ぎっしりで読みにくかろうと、延々と説明が入ろうとすこしも気にならなくなります。一語一語じっくりと単語を追い、脳裏に焼き付けながら本を堪能します。


 さて、これは私の経験になりますが、最初に提示した面白さの段階。つまり一気読みしてしまう面白さ。コレは脳が興奮状態にあってなにかがマヒしています。


 だから興奮状態が覚めると、さっきまで面白かったと思っていたことが、実は大したことではなかったと気づくことができます。


 たとえば、連載されているWeb小説を一気読みしてしまう状態になったとしましょう。その後少し更新間隔があいて、続きを読んでもそれ以前のストーリーや登場人物が思いだせず、けっきょく読むのを止めてしまう。


 そんな経験、皆さんもあると思います。


 でも、その上の段階の面白さになると、じっくり噛みしめて一語一語読んだ効果か、たとえ更新が一年空いてもすんなりと続きから読めます。


 たぶんこれが本当に面白いと言えるのではないでしょうか。


 ではなぜ、これほど面白くなるのか?


 ハイ、それが分かったら苦労しませんね。少しの知識と技術があれば、誰にでも面白い小説が書けるようになります。


 だから私は今、必死に考えています。


 そのなかで、少しづつ理解できたことを書き連ねていこうと思います。


 その前に、面白さにも種類があることを忘れてはいけません。


・笑い、おかしさ、楽しさ

・期待感

・感動

・スリル、怖いもの見たさ

・気持ちよさ、爽快感

・承認欲求、昇進、有能さ

・知的欲求、興味、好奇心

・意外性、ギャップ、驚き、感心、どんでん返し

・好き(Like)、趣味、可愛い、萌え

・支配欲、優越感、特別感

・金儲け、収集

・カタルシス:逆転勝利、逆転劇、復讐、達成、成功、緊張感からの解放

・生存本能に訴えかけるもの:母(父)性愛、安心感(心地よさ)、愛(恋愛)、闘争、勝利、友情、食欲、性欲

・悲劇


 分類したつもりですが、どうもスッキリしません。とりあえず置いておいて、名作がどんな面白さを持っているのか分析してみましょう。


銀英伝:有能な主役が無能な引き立て役に勝利する優越感、知将の有能さを強調する演出(感情移入した読者の優越感)、困難な作戦を成功させる緊張感&期待感&承認欲求&スリル、知将同士が有能さを認め合う演出(感情移入した読者の承認欲求)、復讐によるカタルシス、昇進、悲劇

→優越感>期待感>承認欲求>カタルシス>昇進>緊張感=スリル>悲劇


ドラゴンボール:友情、努力&勝利、負けてから勝つカタルシス、主役が引き立て役の敵を圧倒する優越感&爽快感、主役が引き立て役の味方の敵を討つカタルシス、戦闘が持つ緊張感、強くなったあとの期待感

→カタルシス>優越感=期待感>友情=緊張感>爽快感


ナウシカ:独特なファンタジー世界観による好奇心&期待感、蟲に認められる承認欲求&特別感=優越感、自己犠牲で人間を救う感動、皆に慕われる優越感、空戦の緊張感

→感動>好奇心=期待感=承認欲求=優越感>緊張感


なろうテンプレ(転生・転移):神様チート授与による期待感&特別感、現代知識スゲーによる優越感、俺強ぇーによる優越感&爽快感、容易なハーレム獲得による性欲支配欲の充足、テンプレ化による世界観説明不要な読みやすさ&安心感

→期待感>優越感&特別感>性欲支配欲>読みやすさ&安心感


 これはあくまでも私の主観です。間違っても俺は違うぞゴルァとはならないでくださいね。


 今あげた名作にふさわしい三作品にはカタルシスや感動、緊張感があって優越感も得られる。そして期待感が持続して続きが気になる。だから売れ続けるし忘れられないし多数に認められる。


 ただ、知名度がない状態で小説サイトに連載されたとしても、埋もれて人気は出ないと思います。ネット小説として考えた場合、冒頭が弱すぎますから。


 ネット小説は出だしが一番大切なんです。中盤がいかに面白かろうと、終盤にどれだけ盛り上がろうと、一話切りされたらそれで終わり。二度と読まれません。


 なろうテンプレがネットで強いのは、冒頭に神様からチートがもらえたり、タイトル名にチートを出して期待感を煽ってるからだと私は考えています。


 しかしですよ。なろうテンプレは初っ端から俺スゲーとか強ぇーの期待感だけで引っ張り、緊張感やカタルシスがない。創作が容易だから量産されるけど、印象が薄まって食傷気味だし、世間一般には評価が低くてあまり売れない。低年齢層には割と人気だが購買力が低い。


 なろう作品でも、Reゼロみたいな非テンプレでカタルシスがある作品は割と評価が高いし、売れてるしアニメになっても評判落ちないですよね。


 購買層の話ですが、社会の荒波に揉まれてない大学生以下の年齢の人は、苦労知らずのなろうテンプレに食いつきやすいんじゃないかと思うんです。でも大人買いできる人は限られてくる。


 社会人になると全く苦労せずに簡単に強力な力を手に入れる話は、リアリティがなさ過ぎて共感できない。けれども、ネットの読者人口で考えると低年齢層の力は絶大です。


 ネットで人気を得るためには低年齢層の人たちに支持されることが大事。


 だから目指す『面白い』には低年齢層にも高年齢層にも受ける面白さが必要だと思うんです。しかもことが必須。


 じゃぁどうやって?


 それが分かってれば、私の作品は今頃書店に並んでバカ売れしてますよ。ええ。


 だから考えるんです。低年齢層にも高年齢層にも興味があって、しかもリアリティを損なわずに期待感を持たせる要素とはなにかを。


 男が常々なにを考えてなにに興味があるのかは大体わかります。カネと女と名誉、強さ。でも私には女性がなにを考えているのか、なにに最も興味があるのか分かりません。たとえば恋愛モノのなにに惹かれるのか?


 だから女性の方教えてください。貴女は小説になにを求めていますか? 本能が求めるものはなんですか?


 それが簡単に知れたら苦労はないんですが、これからネットを漁って探してみます。


 今回はココまで。次回は冒頭をどうすれば多くの人を惹きつけられるのかを考えていく予定です。











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