03

いつもお昼は外のお店で食べたり、コンビニで買ったりしている。

オフィス街なので、ランチのお店には困らない。


「秋山は何が食べたい?」

「坪内さんが食べたいものに付き合いますよ。」


私の食べたいものを聞いてくれるとは、さすが王子だ。

特にこだわりのない私は、坪内さんの半歩後ろをついていく。

連れてこられたのは、最近できた可愛いパスタ屋さんだった。


「あっ、ここ!気になっていたんです!」


私がはしゃいだ声で喜ぶと、妖艶な笑みが帰ってきた。

その王子様スマイルはやめて。

素敵すぎて癒しを越えて目に毒だよ。

少しドキドキしてしまったのを悟られないように、私はメニューに目を落とした。

メニューが多くて迷ってしまう。

散々迷ったあげく、私はお店自慢のカルボナーラにした。

坪内さんは和風明太子パスタ。

そっちも美味しそう。


「秋山のカルボナーラ美味しそう。一口食べさせて。」


そう言ったかと思うと、私の返事も聞かずに自分のフォークで勝手にひとすくいしていく。


「旨いな、さすが店自慢のカルボナーラ。」


満足そうに頷く姿を唖然と見ていたら、「俺のも食べる?」と言って自分のフォークでひとすくいして、私のお皿に和風明太子パスタが置かれた。


自然すぎて文句が言えない。

気にしなければいいのかもだけど、気になるでしょ。

普通ただの上司がそんなことする?

どぎまぎしながら食べると、明太子パスタも美味しかった。


「このお店当たりですね。」

「だな。でも、昼時は並びそうだな。」


よく見ると入口付近にすでに待っている人がいた。


「早飯のときにまた来ような。」

「はい。」


返事をしたものの、え、また来よう”な”。なの?

私も一緒にって意味ですよね。


不覚にもときめいてしまった。


そりゃ女子がことごとく落ちるわけだ。

私ですらドキドキしてしまったもの。

あんな優しい顔を見せられたら心臓がいくつあっても足りないよ。

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