第一首 唐揚げ 八句

 本のタイトルは、"源氏物語"。

 なるほど、確かにここ一帯は源氏物語を主題に据えた本が所狭しと並べられている。

 このエリアにあるものは、漫画から文庫本に至るまで、全て源氏物語に類するものばかりだが、その全てが、埃に覆われることなく、背表紙すら一切焼けることのない状態で保管されていた。

 だが、おれが手にしたこの源氏物語だけは、埃を被っている上、表面もなかなかに焼けてしまっている。

 けれど、表紙の絵の細かさだけは一丁前で、他のなによりもおれ好みだった。

 ハードカバーの単行本の表紙に桃色ピンクとも紫ともとれる色の花がポツンとえがいてある。

 一輪の華が必死にあでやかさを振る舞う表紙に、なぜだか、おれの心は強く惹かれた。

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