第一首 唐揚げ 七句


 ────その翌朝、じいさんはポックリと死んだ。死因までは、聴かされなかった。

 ──……おれと交わしたあの言葉が、じいさんの最期の言葉となった。

 あの破れた本は家のどこにも見当たらず、もやもやとした感情を抱きながらじいさんの葬儀を迎え、それが終わったとき、蔵の鍵を手に入れたのだった。

 ──────じいさんが死んで一週間が経った一昨日、満を持して蔵の錠を解き、古びた木と錆びた金具が軋む音を耳にしながら、その扉を開く。

 そこで初めて、おれは書庫蔵へと足を踏み入れた。

 ひんやりとした書庫蔵の中は、無数とも思わせる書架がどこまでも立ち並んでおり、端麗にカテゴライズされた多種多様な書籍が、びっしりとその書架の群れを埋め尽くしていた。

 しかし、綺麗にカテゴライズされているはずの書架のなかに、一冊だけ、明らかに装丁の違う単行本が挟まっていた。

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