第25話 初の話す仲間

 サンテと契約した瞬間、リッチーは進化した。

 元々強者で格が違ったので、サンテと契約する前から進化の条件を満たしていたのだ。

 そして後は、切っ掛け待ちだった。


 リッチーを包んでいた光が収まると、そこにはボロボロの黒い布を纏っただけの美女がいた。

 髪も瞳も黒く顔立ちも美しいがどこか薄幸そうで、元が骨だったからなのか全身の肉が薄く細い。

 今にも倒れそうな雰囲気で、心配したサンテが寄り添っている。


「サンテちゃん、私は大丈夫よ。それよりも、私の名前を決めてくれるかしら?」

「そーう? じゃあちょっと待ってね? 今、考えるから」


(えっと、じゃあクッキーが粒子になって私の迷宮をクリアしちゃって、ラムが転移で最下層まで、サンテ様達全員を運んで来たんだ……そんな攻略の仕方は想定していなかったわね)


 サンテが進化したなまリッチーの名前を考えている間、リッチーは先輩仲間達から迷宮の攻略方法を聞いて呆れていた。


(1級冒険者パーティー、ナビルジーニョにも攻略されなかった、私の自慢の大迷宮だったのに……)


 HPバー残りマックスで完敗した生リッチーは、薄幸そうな顔を更に悲しみに染めて落ち込んでいた。


「よしっ、決めた。貴方の名前はメイリア、メイリアちゃんだよ!!」


 そんな空気も雰囲気も気にせずに、新たなお友達への名付けを行ったサンテ。

 メイリアはまだ魔物なのか、それとも人間になったのか。

 それは本人ですら分からない。


「ありがとうサンテちゃん。私はメイリア、これからよろしくね」

「うん!」


 契約して初めて理解出来るサンテの能力の強さ。

 それと同時に心の深い所で理解出来たサンテの為人ひととなり

 故にメイリアは、頭の中では様付けで呼び、言葉ではちゃん付けで呼ぶことにした。




「それでね、その時ガイさんがピカーって光って、ゴゴゴーってなって、グワーってなったの!」

「あらそうなの。じゃあ今度、機会があったら見せてもらわないと。その時はサンテちゃんも、一緒に見ましょうね」

「うん! それからね、バゴットさんが……」


 初めて出来た会話の出来る仲間……お友達に、サンテは興奮して旅に出てからのことを話し続ける。

 どれだけたくましくても、サンテはまだ10歳の少女だ。

 ガイを始めとした頼もしい仲間はいても、心のどこかでは会話での繋がりを待ち望んでいたのだろう。

 その日、夕食後の就寝まで、サンテが話しを止めることはなかった。




「しかしバゴット、貴方凄いわね。こんな物まで一瞬で作れるなんて、大した魔法だわ」


 夜、会話でサンテを起こさないように配慮して、バゴット作成の巨石ハウスの前で見張りをするサンテの仲間達。

 全員が思念通話可能といっても、サンテが言葉でのやり取りを望むので、メイリアだけは極力思念通話は使わないようにした結果だ。


「コスモスや紅椿は一緒の女なんだし、女性体に進化したらサンテ様とオシャレを楽しめるわよ? あら、ラニラの花冠は可愛いわね」


 こうして、彼等の夜はふけていった。

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