第23話 新たな仲間と騎馬の地位

 自分のことをテイマーと信じたままのイモ娘サンテ。

 彼女はテイマーが召喚を出来ないと知らないまま、山の二合目にまで登ってきていた。

 新たな仲間のサンドゴーレムに乗って。




 新装備ラニラの花冠を頭に乗せたサンテは、数日かけて山の麓にまで移動していた。

 道中仲間になる者はおらず、魔物を討伐し動物から肉を得て、可食植物の葉や果実を集めながらのんびり歩いてきた。


 休憩しようと、そこそこ広さのある場所を探していたら、森に不自然な小さな砂山を発見した。

 ガイとラムが調べに進み、バゴットが他の全員を乗せて空へと下がった。

 その砂山は不思議生物のサンドゴーレムだったが、大人しい性格なのか敵対行動はおろか、ガイ達に気付いても気にした様子はなかった。


 だがそれは間違いだった。

 既にサンドゴーレムは行動を開始していたのだ。

 サンドゴーレムは体の一部を飛ばして、上空のサンテの前に人間の手を作り、握手を求めていたのだ。

 その隠密性と奇抜性に仲間の誰もが驚愕し、サンテの命の危険を前に即座に対応した。


 だが、それよりも、なお早く。

 サンテがその手を握っていた。


 ピコーン!


 そしてサンドゴーレムはサンテの仲間になった。


「貴方の名前はクッキーね、よろしくクッキーさん」


 全ての体を空に飛ばしたクッキーが、顔に見える体の空洞部分の形を変えて笑顔を表す。

 サンテはそのまま空を飛ふクッキーに乗り、何が出来るかを教えてもらうことにした。

 そして今、山の二合目にて無理矢理休憩させられていた。


「ここからは歩いてしか登っちゃダメなの? 高山病? よく分からないけど、歩くわ。だってスタミナは大事だものね!」


 かなり高く険しい山なので、サンテは徒歩と騎乗移動の半々で進んでいく。

 騎乗もバゴットだけでなく、ガイやクッキーにも乗って、乗り心地を確かめてみた。


「乗り心地の、一番はクッキーさん。二番はガイさん。三番はバゴットさんでしたー」


 相当の自信があったのだろう。

 まさかの最下位にバゴットがこうべを垂れて落ち込んでいる。


「クッキーさんは揺れなくて、座っても柔らかかったので一番。ガイさんは硬かったけど揺れなかったから二番。バゴットさんは揺れるしお尻も痛くなってきたから三番だったの」


「ヒヒーン、ヒヒーン!!」


 バゴットはいななき背中にラムを乗せると、サンテに乗るように促した。

 そして地表スレスレの空を歩き、ラムのクッションで柔軟性を獲得。

 コラボ騎馬となることで、ランキングの下剋上を狙った。


 戦闘能力が不明なクッキーはともかく、戦闘力が高いガイに騎乗するのは人材の無駄遣いでしかないので、今後はバゴットにラムクッション方式が採用された。

 ラムがバゴットの腹までとサンテの全身を覆うことで、防御と落下防止効果まであった。


「ヒヒーン! ヒヒーン!!」


 騎馬の地位を取り戻したバゴットはとても嬉しそうに、いつまでも嘶いていた。


 そして鳴き声に引き寄せられてきた魔物のフィーバーに、クッキーの凶悪さが披露されていたのだった……



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