第15話 冒険者のリーダーはもう驚かなくなったと言ったが間違いだったらしい

 夜明け前、冒険者が最後の見張りと交代してしばらく。

 サンテの仲間、リビングアーマーのガイがフラっと姿を消した。

 冒険者達は何も異常を感じなかったので、ガイが見回り偵察に出たのだと考えていた。

 だが、その考えは非常に甘かった。

 それはもう、高級品である黒砂糖を、直接噛み砕く程度には甘かった。


 夜が明けて全員が起床。

 食事の片付けも終わり出立する、正に直前。

 首を長く伸ばした馬のような四足よつあし生物に乗ったガイが、野営地へと戻ってきた。


「おい、あれってゴジラフじゃないか?」

「ああ、多分間違いない」

「いや、多分なのか間違いないのか、どっちだよ」


 警戒しながらも冒険者達がヒソヒソと話し合っている。

 話題の中心の生物ゴジラフは、背中から降りたガイに合図され膝をつき、顎を地面に触れされてサンテに対して服従の姿勢をみせた。


「ちょっ? サンテちゃん、まだ増やせるのかよ!?」


 驚愕しているリーダーに気付かず、サンテはゴジラフの顔の前に歩み寄る。


「キリンさんの名前はバゴット、バゴットさんだよ。よろしくね」

「ヒヒーン!」


 馬の嘶きにも似た鳴き声で、喜びを表すゴジラフのバゴット。

 だがそれも、一瞬の出来事だった。


 ペカー。


 バゴットは眩しくない程度の光を全身から放つと、光の中でその巨体を、少しずつ小さくしていった。

 体のリサイズと共に発光現象も収まると、通常サイズの馬と同等になっていた。


「おおーっ! バゴットさんが、お馬さんになっちゃったー!」


 ブブー!

 数日振りに聞いた不正解の音に首をかしげるサンテ。

 正解は意外なところから来た。


「まさかそのコは、デンセツのセイジュウ、キリンなんじゃ……」

「バゴットさんは、キリンさんからキリンさんになったの?」


 ピンポンピンポーン!


「よくわかんないけど、キリンさんでもお馬さんでも、バゴットさんはバゴットさんだよね」

「ヒヒーン!!」


 サンテの仲間達も、新たな仲間の参入に喜び歓迎していた。




 だが、冒険者達はそれどころではなかった。


「キリンはワタシのクニにある、デンセツのセイジュウをトウカツするソンザイで。ダイチのケシンとまでイわれてるんだよ」


 冒険者達はおろか、聞き耳を立てていたクヨフも、空いた口が塞がらなかった。

 その間にサンテは麒麟のバゴットに乗せてもらい、上空を疾走している。


「アハハハハハハハハハ!」


「俺、あの子が生きてる間は、まわりの人間が驚きに溢れた人生になると思うわ」

『ウンウン』


 双頭剣と盾を背負った飛行形態のガイと、その鎧を内部に入ったラムとコスモス。

 紅椿とタンデムになった、バゴットに乗るサンテ。

 刃が危険なので、少し距離をおいて並走飛行する一行を見ながら。

 地上の人間一同は、悟ったような諦めを感じているのだった。


「アハハハハハハハハハ! 楽しいねー、アハハハハハハ!!」

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