第3話 邂逅

「ん~~~~!!!!!」

 声にならない悲鳴を上げる楠。

 口の部分を何かで押さえられている為、悲鳴を聞きつけて他の人が来るというのは考えにくいだろう。

「どっちからやる?」

「楠を抑えていない方だな。もしも不意打ちが失敗して楠に当たると怖い……」

 マイナス思考な理由だが、しょうがない。こういうのは初めてなのだ。手が震える。口の中も乾いてくる。

「手が震えてるじゃねーか……。不意打ちは俺に任せな。その後のフォローはよろしくな」

「あぁ、任された」

 村上も内心はかなり恐怖に支配されているとはずなのに、一番勇気のいる仕事を買って出てくれた事に感謝する。

「それと……、これが終わったら、色々と説明をよろしくな!」

 と言い、村上はゆっくりと、森の中に入っていった。


「ん? もう1人いるな?」

 木々を掻き分ける音を聞きつけ、楠を抑えていない奴が呟く。

 その言葉を聞き終えるか終えないかの内に、ゆっくりと歩いていた村上が駆け出した。

 木刀を思いっきり振りかぶるが、辺りの木々が邪魔をして思ったようにスピードが出ない。

 案の定、木刀は正面から受け止められる。

「こいつは俺がやる! だからお前は楠を助けだせ! いいな!」

 その声にハッと我に返る。

 俺はギュッと木刀を握り締め、逃げ出したもう1人の男を追って森の中に飛び込んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る