社の向こう側

刹那

第1話 始まりの夢

いつも同じ夢を見る……




 夜の美しい蓮の池……




 蛍が飛び交い池の水面が緑の光に包まれる静寂な時間……




 凄く神秘的だ……




 そして池の中には鳥居が浮かんでいる……




 何時間も見ていたい……




 そんな気持ちにさせる……




 そして夢が終わりに近づくと決まって池の水中が透き通って緑に光り池の底まで見えるようになる……



かなり深い……




 そして池の底には神社?!らしき建物があり、神主らしき人物……




 神主の前には布で包まれ華で飾り付けられた物?が浮かんでいる……




 それは青く光っている……




 そして……参列者らしき人達がパイプ椅子に座って哀しげな表情をしている。




 何故水中の中で呼吸が出来て浮いたりせずに座ったりできるのだろう?




 そして一人一人立ち上がり神棚に白い紙の付いた棒のような物を置いていっている……




 最後の人が、その棒を置いた瞬間




 神主らしき人が何か唱えて今までつむっていた目を開けた瞬間



青く光っていた物が青白い炎に大きく包まれ消えていった……




 そして……




 それを見ていた僕に気付いた様に神主らしき人が僕を睨み付ける……






 人間とは思えない程美しいグレー?嫌……パールグレーの瞳で……






そこでいつも夢から覚める……




 あの青く光った物は……きっと……


みんみんみんみーん!!


 『おい! 起きろ! 桐ケ谷!』




 聞き慣れた耳障りな声が聞こえる……




 『学校は寝る所じゃ無いぞ!!早く黒板に書いてるの写しなさい!』


『もう消してしまうぞ?!』


 『それから!いつになったら、その髪の毛の色とカラコンちゃんとしてくるんだ?!』


 『グレーとか…… お前は宇宙人か?!』




 担任の上原だ……




 俺は大きなアクビをしながら『はーい……いつか直しまーす…… 』とだけ返事をした。




 窓の外を眺め青い空を見つめながら…




それにしてもクーラー効きすぎてねぇーか?


 外は灼熱だろうな……




 おっ!紹介がおくれたな!




 俺は市内の私立高校に通っている高校二年の桐ケ谷 楓(きりがや かえで)十七歳だ。




 明日から夏休みが始まる……






キンコンカンコーン(チャイムの音)


 高い声で女子が俺の名前を呼ぶ……


 『桐ケ谷くーん! 二年四組の梢ちゃんが桐ケ谷君の事好きらしいよー』




『本当!自分の身の丈分かってないよねー』



本当……


 このての女子は苦手だ……


 学生なのに水商売のおねーちゃん並みのメイクして……


 キッツい香水も付けやがって……臭いっちゅーの!!




 『どけよ!!』




右手に鞄を持って肩にかけ女子一号二号三号にぶつかる様に通り過ぎ




半分開いていたドアを右足で軽く蹴り広げ


 振り返って女子一号二号三号に(こいつらは名前覚える気にもならない)




『上原に帰るって伝えてて』


 と切れ長の視線を女子に送り教室のドアを開けっぱなしで、すぐ左にある階段をだるそうに一階まで上履きを踏みながら降りていった……


階段をすれ違う女子はチラチラ俺を見ていく……




 モテるって辛いなー!!視線がもう痛い!笑






 上履きを履き替えグランドを通り抜けて門へと目指す。



この学校は高台にあり緑も豊富で景色もメチャクチャ良い!


 でも……


 俺みたいに途中で学校を早退する奴には少々キツい……




なぜならスクールバスが無ければ徒歩で45分程歩いて高台を下らなくればならないからだ。




 昼飯食って帰れば良かったかなー?!




 景色を見下ろしながらこだまのように


 『腹へったー!!はらへったー!ハラヘッター!』と叫んだ。


『ワンワンワンワン!! 』


 おっ!!きたきた!




俺のもう一つの目的は、こいつに会うためだ!


 『うぉー!!ロビン!!』


 ロビンは俺めがけて一直線に走ってくる。なんて可愛いんだーーー!!




スンスーン ペロペロ


『こらっ』


『くすぐったい』『あはははっ!』




ロビンと言う名前は俺が決めたんだ。


 野良犬なんだ……




人になつかないけど俺にだけなついてくれたんだ……


 まー、努力はメチャクチャしたからなー!


 初めは軽く噛まれたりもしたし……




ゴールデンレトリバーの血が入ってそうな顔して可愛いんだ!


中型犬よりチョイでかい感じかな。


 一度連れて帰ろうとしたけど


こいつ、ここから動こうとしないんだ。


縄張りを離れたくないのかも……


 まーーー俺ん家団地だからコッソリ飼わなきゃいけないから可哀想だけどな……




こいつにとっては一匹でも楽しい我が家なのかも知れないな……




 『ほら!缶詰め持ってきたぞ!!たーくさんたべろよ!!』




『わんっ!!』ピチャッピチャッピチャッ




毎日ロビンの為にschool鞄にロビンの食事の皿を入れてる俺って……女子力高い!!


はぁーーー




しかし……


 ここはなーんにも無いなー。




高台には学校しかないから授業中の時間帯はだーれも居ない……




美味しい空気、たくさんの緑、うるさいセミの声、下を見下ろせば町が見える……




平和だなー


ワンワン!!』




『おっ!食べ終わったのか?美味しかったでちゅかぁーーー?!』


……




わっーーー!!!ヤバい!


 ついつい、でちまった!!


こんな事聞かれたら俺のイメージダウンに繋がりかけない!!


 危ない危ない……




あれ?!ロビンは?!




『ロビーン!』






居ない……




何処へいった?薄情なやつだなー。




『腹いっぱいになったら、おさらばかよ!!』


俺はロビンが食べ終わった皿をティッシュで拭きながらキョロキョロとロビンを探していた…_




『ワンワンワン!! 』




 『あっ!ロビン!!こっちにこいよ!』




ロビンは高台を少し下がった木がうっそうと茂った森から俺をじぃーーーと見つめて動こうとしない……




俺はロビンのお皿と空の缶詰めを鞄に直してロビンの所まで歩いていった……




『それにしても暑い……ロビンは暑くないのか?』




俺が近づいて行くとロビンはうっそうと茂った森の中へ……




どんどん……どんどん進んで行った……


 まるで


俺を導いているかのように……


まさか!このパターンは!!』




『ロビンに子供がいてるんじゃ!!動画なので良くある!』




『もう子犬なんか見てしまったら……!俺もうダメ……』




『離れられなくなる…』


 と妄想がよぎる。




するとロビンがコケが沢山生えた石段の前で止まった……




 何段ぐらいあるのだろう?




石段がありすぎてわからない。。




二百ぐらいあるんじゃねーか?


 


石段の前には鳥居がある。




その鳥居にもコケがついている……




朱色がかろうじて薄く見える感じだ。




鳥居は何故赤色なのか聞いた事がある……




あれは水銀で木材の防腐剤や虫除けの効果があり、魔除け(鳥居は人間の世界と神様の世界を分ける門で結界のいみがあり)赤色は悪霊を払う力があるらしい……



なんだか薄気味悪い……




木が沢山あって陽射しが入らず薄暗い感じで寒気さえ感じる……




石段はコケが取れている場所が全くない。




って事は人が何年も登っていないと言うことだ……




『ハッハッハッハッ!!』ロビンが石段を登っていく!




『ちょっと待てよ!!ロビン!』




五段登って振り返り俺を見ている……




『わかったよ……』





『行けばいいんだろう……』




『けどロビンも登った事ないんじゃねーの?!』


足跡ついて無かったし……




ブツブツ言いながらロビンの後をついて行った……




何段かごとに鳥居がある……




油断していたら滑りそうだ……




でも……




 凄く神秘的だ……!!




森の精でも、いそうな感じだ……




相変わらずロビンは五段登っては振り返り俺を待っている……




今気付いたけど……ロビンの瞳って……


グレーのキレイな瞳をしてるんだな。




何処かで見たような綺麗な瞳だ……




 何処で見たんだろう……?



もう足もガクガク筋肉痛だ。




前すら見れない。石段を見つめながら登って行く……




最近体育も出たこと無かったからなーーー。




運動不足だな……




『もう限界だ!!ロビン!』




ロビンを見ると足から血が滲んでいる!!




コケの石段を登っているので爪でしっかりとらえないと滑り落ちてしまうので力を入れて肉球が傷付いてしまったんだろうか?




『ロビン……』




『よーし!後少し俺も根性だすかーーー!!』




黙々と無言で登っていった……




すると!!




『おっ?!何か見えるぞ!!』




ゴールを見つけた俺は急に元気になりロビンを抜かして一段抜かしで石段を登っていった……






『うおっーーー!!』




目の前には真っ赤に色付いている曼珠沙華(彼岸花)が池を囲む様に咲き誇っている……




池には蓮の花が浮かんでいて




水は美しく透き通っており




アメンボが気持ち良さそうに水の上をスイスイ進んでいる……




メダカの姿も見える……




天国があるなら絶対にこんなん感じだろうな……


そして……




不思議とこの場所だけ蝉の鳴き声がしない……






水の優しい音だけが響いている……




ロビンは池の水にそっと顔を近付けて乾いた喉を潤すように水を飲んでいる……






池の中心には鳥居があり


 その後には社やしろがある……




どうやって社まで行くんだ?




ボートも無いし……




橋もな無い……


池を泳いでいくのか?深さは、そんなに無さそうだけどなー。




池も公園良くある池の大きさで


 さほどでかくない……




ロビンは水飲んで満足したのか池をずーと眺めてある……




俺もロビンの左側に座り


 ロビンの肩に腕をまわしロビンの肩に頭を預けて池の景色を眺め続けた……






ピロロピロロー!!




ん?!




ふと我に戻り鳴り響く携帯の画面を覗いた……




おかんからだ………






『もしもし……』




『こら!楓!!また学校早退したんだって?!学校から連絡が来たわよ!!』

『今どこなの?!さっさと帰ってきなさい!!今日はお父さんに怒ってもらうからね!!』


プープープー……






喋るだけ喋って切りやがった_…




『……たくっ……』






さっ!帰ろうか?ロビン




ロビンも立ち上がり一緒に石段を下って行った。




こりゃ明日は筋肉痛決定だな……




最後の石段を降りて森を抜けようとしたとき……




ロビンが立ち止まった……




『ロビン行くぞ!!』




動かない……




『もしかして……ここがお前の寝床か?』




『じゃー!又な!ロビン。』




あっ!そうだ!!『明日から夏休みになるから毎日は来れなくなるんだ!』




『バイトも入ってるし……』




『三日に一回は来るからな?!頑張って他の人にエサをねだるんだぞ!!』




『他の人……通るかなっーーー?!』




携帯で時間を確認すると夕方の五時になっていた……




美しい物を見ると人間って時間を忘れる物なんだ……と認識した日だった……










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社の向こう側 刹那 @Megu0826

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